ダークグラスの映画専門家レビュー一覧

ダークグラス

「サスペリア」などで知られるホラーの帝王、ダリオ・アルジェントの10年振りの監督作。娼婦を狙った連続殺人事件が発生。標的にされたディアナは殺人鬼に執拗に追いかけられ、車の事故で両目の視力を失う。だが、その後も殺人鬼はしつこく彼女をつけ狙う。出演は、「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」のイレニア・パストレッリ、「ダリオ・アルジェントのドラキュラ」のアーシア・アルジェント。第72回ベルリン国際映画祭上映作品。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    鮮血描写はやや控え目にも映るものの、無駄を削ぎ落としつつ、強引すぎるサングラス購入場面など時にご都合主義も厭わないソリッドな脚本、マニエリスティックな劇伴、細部まで美意識の行き届いた美術に撮影と、各所で原点回帰と称されていることも納得の充実したジャッロ。近年のポリコレ要請に応えるかのような要素を、単にアリバイとしてではなく、自立した主人公の人物像を強調するとともに、あくまでも自分の撮りたい画に引きつける形で取り入れようとする貪欲な姿勢も嬉しい。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    盲目系ホラーは多々あるが、本作は目が見えないということを、例えば視覚の代わりに聴覚や嗅覚に頼るという演出の一要素として扱うよりも(もちろん多少はあるが)、他者との交流を深めるものとして扱っているのが印象的。また、夜のシーンの画面の9割が真っ暗で何も見えない攻めた撮影は、もはや観客までもが視覚を奪われているとも言えるかもしれない。そんな暗闇のなか、タイトな物語展開や、誇張なく常人的なスピードで冷静かつ痛々しく行われる殺人描写が光る。

  • 文筆業

    八幡橙

    アルジェントへの思い入れによって評価はかなり変わるだろうが、82歳にして再び原点に立ち戻り、いかにも自分らしい映画をなおも送り出す、その気概にまず脱帽。往年の色彩感覚や美術へのこだわり、異彩を放つ独特のセンスには正直衰えも感じたが、盲導犬の奮闘+唐突に行く手を阻む障害物など、随所に「サスペリア」へのオマージュも見え、ファンへの目配りもしっかり。冒頭の日蝕や、盲目の娼婦と中国人少年の組み合わせが結局今一つ生かされていない点含め、期待を裏切らぬ一本。

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