帰れない山の映画専門家レビュー一覧

帰れない山

北イタリアの雄大なるモンテ・ローザ山麓を舞台に、都会育ちの少年と同い年の牛飼いの少年の友情と成長をたどる“大人の青春映画”。すべてを教えてくれた山と対峙し、それぞれが己と向き合い葛藤しながら、「ありのままの自分でいられる場所」を発見していく。イタリア文学の最高峰「ストレーガ賞」を受賞し、世界中で39言語に翻訳されているパオロ・コニェッティのベストセラー小説を忠実に映画化。第75回カンヌ国際映画祭にて審査員賞を受賞。主人公のピエトロ役には「マーティン・エデン」で第76 回ヴェネツィア国際映画祭で男優賞に輝いたルカ・マリネッリ。親友のブルーノ役には、「Sulla mia pelle(私の肌に)」(日本未公開)でダヴィッド・ディ・ドナテッロ主演男優賞を受賞したアレッサンドロ・ボルギ。「ビューティフル・ボーイ」で知られるベルギーの俊英、フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲンが監督を務めた。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    子供時代に出会った二人。すぐに仲良くなる。ちょっとした行き違いで二人は会わなくなる。時間が飛んでアッという間に青年になった二人。出会ってもぎこちなく目線を交わすだけ。またまた時間が飛んで再び出会う。二人とも髭モジャでいいおっさんになっている。お互いの髭を褒めあったりして微笑ましい。二人は会わなかった時間がなかったかのように仲良くなる。その後もケンカしたり疎遠になったりしながら二人の関係は続く。二人の背後に流れる時間を見ていたんだと気づく。

  • 文筆家/俳優

    睡蓮みどり

    大切な人との大切な時間を本作は丁寧に綴っていく。ピエトロとブルーノをどこかアラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンドを彷彿とさせる対照的なふたりが演じる。まったくタイプの違うふたりが、少しだけ似てくる瞬間がある。長い時間を、それは積み上げてきた時間だけでなく、積み上げられなかった空白の時間をも内包し、あるがままに受け止める。この映画が持つ豊かさはとても壮大で深く、過去の名作に並んでも引けをとることのない力強さを持っているだろう。

  • 映画批評家、都立大助教

    須藤健太郎

    ピエトロのナレーションで語られていく点に居心地の悪さを感じる。彼が語り手である以上、彼の自意識の物語にしかならないからだ。ピエトロとブルーノは対照的な存在なのではなく、その関係は一方的なものだ。都会の金持ちの子であるピエトロは家を出て、自分探しに興じる。そんな彼の輪郭を際立たせるために、山で貧困に喘ぎ先祖代々の家業を受け継ぐブルーノという存在が作られているだけの話である。ピエトロが十分に成熟すれば、ブルーノはもう用無しだといわんばかりの結末。

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