ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょうの映画専門家レビュー一覧

ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう

ヨーロッパの桃源郷と呼ばれるジョージア(旧グルジア)の古都、クタイシを舞台に繰り広げられるおとぎ話のようなラブストーリー。運命的に一目ぼれした男女が明日会う約束をするも、“呪い”によってお互いに外見が変わってしまう。約束のカフェでずっと来ぬ人を待つ二人の恋の行方は……。新作映画のために街でカップルを探すカメラマン、サッカー好きの子供たち、観戦好きの野良犬など、それぞれが織りなす物語がやがてひとつになっていく。日常を魔法のように輝かせて見せたのは、本作がドイツ映画・テレビアカデミー(DFFB)の卒業制作作品になる、ジョージアの新星アレクサンドレ・コベリゼ。穏やかな空気と光をとらえた16ミリフィルム撮影と、さりげないピアノとハープの音色によって、夢のジョージア旅行へと誘ってくれる。第71回ベルリン国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞、第22回東京フィルメックス最優秀作品賞受賞。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    校門前で登校する子どもたちを捉えていたカメラが、ホン・サンス映画を思わせる唐突さで急激にズームインし、足元だけが映るなかで男女の出会いが捉えられる冒頭の場面にまずぐっと引き込まれる。恋愛映画という惹句とは裏腹に、野良犬や樹木、橋、川、そして風といった、フレーム内に映るクタイシの風景や生活を構成するあらゆる要素がいずれも人間と等価に捉えられる撮影は、ピッチ上のサッカーボールや散歩の道程のようにふらりと行き先を変える奇妙な物語の流れとも見事に符合。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    一目惚れした男女は、その日、呪いによってそれぞれ顔も能力も別人になり、近くにいながらすれ違い続けるという風変わりな物語。しかし、演出は、そもそも変わる前の顔を観客に認識させる気がないのは明らかだし、男の方は顔よりも髪型の変化が激しく、女の方にいたっては、どこが変わったのかと思うほど前と似た顔に変化しており、物語以上にやってることが風変わり。しかもそれをこれみよがしにアピールすることなく、気づいたらサッカーばかりしている、実に不思議な映画。

  • 文筆業

    八幡橙

    筋書らしい筋書も台詞もほぼなく、流れや展開やドラマなどどこ吹く風で自由気ままに綴られる音楽&映像による素描。主役となるのは、紛れもなくジョージアの古都クタイシの街並みだろう。映像学校の卒業制作作品ということで、監督の若さがあらゆる箇所に垣間見られる。美しい街も風が揺らす木々も子供の笑顔も寝そべる犬も、確かに絵にはなるけれども、それだけでは何も届かない。目線は監督の周囲半径数メートルの域を出ず、まだ観客より自身に向いている印象。150分は長すぎる。

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