EO イーオーの映画専門家レビュー一覧

EO イーオー

ポーランドの巨匠、イエジー・スコリモフスキ監督が、ロベール・ブレッソンの「バルタザールどこへ行く」にインスパイアされ、EO(イーオー)という名のロバの放浪の旅を通して、その魂の純真さと、人間のおかしさや愚かさを描き出した、美しくも哀しい現代の寓話。サーカス団で平穏に暮らしていたEOは人間たちの都合でサーカス団を追われ、やむなく放浪の旅に出る。ミハウ・ディメクが撮影したポーランドからイタリアへと至る雄大な大自然、臨場感あふれるカメラワーク、パヴェウ・ミキェティンによる印象的な音楽に導かれ、観客はEOの旅を見守りつつも、ある時はEOの目線で予期せぬ荒波を潜り抜ける。第75回カンヌ国際映画祭にて審査員賞、作曲賞受賞。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    ロバのEOが超かわいい。彼はサーカス団を追い出されてあちこち彷徨う。いつもはのんびりしているのに時々アナーキーになるのが面白い。急に動き出して棚をなぎ倒して走って行ったり、後ろ足で男の顔を蹴って気絶させたり。時々サーカスにいた時に可愛がってくれた女の人を思い出す。彼女は過剰なまでにEOを愛撫する。妙にセクシー。そのことを思い出して彼は鼻の穴を広げる。人間が襲ってきても逃げない。捕まってひどい目にあってもじっと耐える。隙を見てトコトコ逃げ出す。

  • 文筆家/俳優

    睡蓮みどり

    スコリモフスキの映画はいつも驚きと興奮で満ち溢れている。どの作品が一番好きかと聞かれても選べなくて困ってしまうくらい、どの作品にも心惹かれてきた。ロバであるEOの瞳に映る世界を知るとても贅沢な映画体験は、冒頭から最後まで目が離せない。音、編集、セリフの一つ一つに唸りながら、自身の体がスクリーンになっていくかような没頭感を覚える。イザベル・ユペールの登場には思わず笑ってしまったが、冒頭から最後まで、センス抜群。これが映画だとしみじみ思った。

  • 映画批評家、都立大助教

    須藤健太郎

    「バルタザールどこへ行く」(66)は唯一「泣いた映画」であって、それは「好きな映画」とは違うと監督はいう。実際、この傑作を前にすると、ブレッソンはいかにも説教臭く見えてしまう。ブレッソンが「意味」と戯れたとすると、スコリモフスキが目指すのは愚鈍なまでの「無意味」である。脚本は単なる出来事の連鎖であり、そこにあるのはピタゴラ装置のごとき自動運動だ。ところで、「エッセンシャル・キリング」(10)のV・ギャロはロバだったのかといまさら気付く。

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