CLOSE クロースの映画専門家レビュー一覧

CLOSE クロース

鮮やかな花畑や田園を舞台に、無垢な少年に起こる残酷な悲劇と再生を描き、誰もが経験する「あの日」の後悔と孤独、大人になるまでの痛みや軌跡を重ねる物語。第75回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。13歳のレオとレミは大親友だったが、中学校に入学後、クラスメイトにその親密さをからかわれて気まずくなる。監督は前作「Girl/ガール」で第71回カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を受賞したルーカス・ドン。主人公のレオと幼馴染のレミを、エデン・ダンブリンとグスタフ・ドゥ・ワエルが演じ、俳優デビューを飾った。
  • 映画監督

    清原惟

    望遠レンズでぼやけた色彩が、画面のあちこちで踊っている。クローズアップで切り取られた2人の少年は、お互いの息づかいがわかるくらい近い。近視眼的な視点で撮られたこの映画は、物語への集中を強いると同時に、直線的な感情へと導く。そのやり方には少し息苦しさを感じた。悲劇が日常を飲み込むのはそういうものだと思うけれど、生きることのさまざまな時間がもう少しだけ見えたらよかった。親友から遠ざかるにつれて、主人公の言葉が失われていくのが印象的だった。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    今だとタイムリーなLGBTの文脈で語られがちだが、むしろそうした社会学的なタームでは零れ落ちてしまうある繊細さこそがこの映画の純粋心棒だろう。幼馴染みのレミとレオは家族よりも親密な仲だが、レオのある行為が思いもかけぬ悲劇を招き寄せる。映画はレミが不在となった後半、〈赦しとは何か〉という隠れた主題が浮上し、思索的なトーンが一層深みを帯びる。とりわけレミの母親を演じたエミリー・ドゥケンヌ(「ロゼッタ」のヒロインだ)の哀切極まりない名演が深く記憶に刻まれる。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    若者をめぐる映画が並んでいるが、これはベルギーの少年の物語。「Girl/ガール」の監督によるカンヌ・グランプリ作で、少年同士の親密な友情と曖昧な性をマジックアワーの淡いに包み込んだ。全篇が強力なクローズアップの連続からなり、痩身の少年の引き裂かれるような喪失感に類稀なる繊細さを沁み入らせている。同時に、これは大人たちの辛さの物語でもあった。少年は、異性の言葉をきっかけに友情を失い、言語化以前の孤独に蝕まれていくが、大人たちも彼の痛みに適切な言葉を与えることができないでいるのだ。

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