青春弑恋の映画専門家レビュー一覧

青春弑恋

リアルとバーチャルが交差する都市・台北で、愛と欲望、犯罪に囚われた6人が奏でる群像劇。大学生、カフェ店員、料理人、女優、女子高生ら一見何の関係もない6人がある出来事をきっかけに互いに影響し合い、それぞれが台北駅の無差別殺人事件に巻き込まれてゆく。監督は、トロント国際映画祭の審査員プラットフォームアワードを受賞した『幸福城市』のホー・ウィディン。出演は「オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁」のリン・ボーホン、Netflix『次の被害者』のムーン・リー。第34回東京国際映画祭で『テロライザーズ』のタイトルで上映。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    そもそも尺が長すぎるが、それ以上に、中年男性監督が提示するいかにもネット時代の若者のリアルを掬い取りましたと言わんばかりの物語には閉口。親世代に訳知り顔で苦しみを代弁されることほど、当の若者たちにとって迷惑なことはないだろう。また、アート映画然とした演出と撮影にも乗れず。視点人物を入れ替える群像劇の構成を取ることであえて薄っぺらさを狙ったのかもしれないが、現代的な意匠をまぶしてそれっぽく撮れば時代の空気が捉えられるというものではないはずだ。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    見慣れない字面ではあるが、タイトルの「弑恋」という言葉がうまく表しているように、台北で暮らす若者たちのラブストーリーかつサスペンスでもある映画。登場人物それぞれの視点で、若者たちによる殺傷事件が起こるまでの経緯を語り直す本作の構成は、ヘタをすると、なぜ事件が起きたのかという問いが中心になりすぎて、単にパズルのピースを当てはめていくような答え合わせに堕してしまう。しかし、本作はそのピース一つひとつの形、その歪さこそ描くように努めているようだ。

  • 文筆業

    八幡橙

    かのエドワード・ヤンの「恐怖分子」と同じ英題で、同じ台北が舞台の群像劇。確かに、どこか古めかしい空気や、一つの事件を巡って徐々に見えてくる若者たちを結ぶ糸、さらに直截的なところでは少女のかける間違い電話や複数人が出入りする空き部屋というモチーフなど、監督が捧げた“オマージュ”は随所に覗える。ただ、ホン・サンスの「豚が井戸に落ちた日」にも受け継がれた「恐怖分子」の持つ、都会に潜む孤独や不安、不穏なまでのざわめきがもう一つ伝わってこなかった。

1 - 3件表示/全3件