クモとサルの家族の映画専門家レビュー一覧

クモとサルの家族

諏訪敦彦監督「風の電話」などのプロデューサーを務めてきた長澤佳也がメガホンを取った時代劇。元忍びの夫・サルと腕利きの忍びである妻・クモの子供たちは、ある日記憶を失った老人を助けるが、その老人の正体は椿藩藩主の貴虎で、命を狙われており……。家を守る専業主夫のサルを「罪の声」の宇野祥平が、稼ぎ頭の忍びの妻クモを「ずっと独身でいるつもり?」の徳永えりが演じるほか、「グッバイ・クルエル・ワールド」の奥田瑛二、「春待つ僕ら」の緒川たまきらが出演。35mmのフィルムで撮影された。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    一体何がやりたい映画のか。忍者の擬似家族が老人を助ける。老人は姥捨政策を始めた元殿様で、家族は山に捨てられた老人たちと共闘して殿様を助けようとする。要約すると面白そうだが、登場人物の誰一人として気持ちも行動原理も分からない。これだけの役者たち、何も言わなかったのか。しかも冒頭以外、オールアフレコ。子役4人に至ってはなんとアテレコ。音楽も軽く、何かの効果を狙ってのことなんだろうけど、ただシラけるだけ。子役が可哀想。これは公開するに足る映画だろうか。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    忍びの術をつかう優秀な母親が外でバリバリ働いて稼ぎ、気の弱そうな夫が家事と子育てをする。セリフはほとんど現代語で、音楽はジャズ。まるで現代劇のような軽快な時代劇。山中貞雄のように、と言いたいところだが、あの省略の効いたテンポの良さとリズム感はない。姥捨てや戦乱、謀反といった背景まで設定して殺伐とした武家の世を現代社会に重ねるような批判精神があって、その意気やよしだが、いささか消化不良で唐突。そこまでやるならもう少し予算をかけてほしかった。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    両親を眼前で殺された孤児や姥捨山に放置された老人らが、信頼できる者同士で身を寄せ合い生きる姿や、派手めに噴出する血しぶきに、一見平和な時代に対する批判的な視点が感じられなくもないが、時代劇としてもアクションとしても、あまりにゆるく中途半端。恐妻家に見えて実はラブラブ夫婦を好相性で演じる徳永と宇野や動作機敏な子役たちに、「インクレディブル・ファミリー」忍者版のような可能性の片鱗も見受けられただけに、もっと緩急をつけるなど高みを目指して欲しかった。

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