ボーンズ アンド オールの映画専門家レビュー一覧

ボーンズ アンド オール

「君の名前で僕を呼んで」の主演ティモシー・シャラメと監督ルカ・グァダニーノが再タッグを組み、第79回ヴェネツィア国際映画祭にて監督賞、新人俳優賞をW受賞した禁断の純愛ホラー。社会の片隅で生きるマレンとリー。二人が抱える秘密は、生きるため本能的に人を喰べてしまうことだった。衝動を抑えられずに苦しむ少女マレンをテイラー・ラッセル、彼女と運命的に出会い、ありのままを受け入れようとする青年リーをティモシー・シャラメが演じる。「誰も傷つけたくない」と願うマレンと、「喰わなきゃ生きていけない」と叫ぶリーの前に、喰べるのか、自殺するのか、自分を監禁するのか、究極の選択が突きつけられる。宿命を背負った若者たちの居場所を探すロードムービー。
  • 映画評論家

    上島春彦

    タイトルの意味が「骨ごと全部」だというのがじわじわ分かってくるのが怖い。演歌〈骨まで愛して〉を知ってる人ならこの感覚にもついていけるであろう。♪生きてる限りはどこまでも。でもって『ポーの一族』みたいな映画かと思ったら全然違う。「地獄の逃避行」から連なるアベックキラー・ロード・ムーヴィーであり「ヒッチ・ハイカー」みたいな荒野恐怖も生々しい。恐怖とはいえノスタルジック、そこが80年代(が舞台の)映画なのだ。老いたジェシカ・ハーパーは「いるだけで」怖いよ。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    ラストシーンにすべてが賭けられた映画。甘酸っぱい青春ムービーをやりたいのか、カニバリズムのホラームービーをやりたいのか、どちらにも振り切らず中間地点で彷徨っているともとれるが、ルカ・グァダニーノの非の打ち所がない独創的な映像美で綴られる青春映画に、後者の狂気が時折凶暴なまでに牙を剥く様をみればいいのかもしれない。グァダニーノの過去作「君の名前で僕を呼んで」のホモエロティックなムードをそのまま援用したようなティモシー・シャラメの人喰い描写が白眉。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    とにかく出演者全員の顔がいい。そしてカメラマンのアルセニ・カチャトゥランによるショットの切れ味が抜群で、映っているモメンタムのみずみずしさはガス・ヴァン・サントも顔負けだ。それだけでもいつまでもこの映画と同じ時間を過ごしていたくなるが、そこに差し込まれるトレント・レズナーの動く低音ノイズの破壊力たるや。カニバリズムを描いた本作が80年代を舞台にしているのは、同じころ世界的にはびこりはじめ、今やわれわれに共食いをうながすあのシステムを意識してか。

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