ミステリと言う勿れの映画専門家レビュー一覧

ミステリと言う勿れ

田村由美による人気漫画を原作とした同名TVドラマの劇場版。通称“広島編”といわれる原作を基に、広島を訪れた天然パーマの大学生・久能整が代々、遺産を巡る争いで死者さえ出るといういわく付きの名家・狩集家の遺産相続事件に巻き込まれてゆく顛末が描かれる。出演は「花束みたいな恋をした」の菅田将暉、「アイ・アム まきもと」の松下洸平、「太陽とボレロ」の町田啓太、監督は「信長協奏曲(ノブナガコンツェルト)」の松山博昭。フジテレビ開局65周年記念作品。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    キャラクターを我がものにした菅田将暉の芝居は見ていて楽しい。顔のアップ濫用がやや気になるが、アイドル映画としては正しい作りだろう。劇中のセリフで「犬神家の一族」を引き合いに出すのもハッタリにあらず。軽妙な定石外しと、意外に重たい因襲劇の合わせ技で、ミステリとしても楽しませる。もちろん映画的なサムシングなど求めず、素直に人気ドラマの延長として向き合える人が、いちばん楽しめるであろう一篇だ。ただし事件解決後のくだりは、悪い意味で最近の映画的に長い。

  • 映画評論家

    北川れい子

    原作の漫画はドラマ化もされているそうだが、この作品、物語的な設定からして、アララ、市川崑監督の“金田一耕助”シリーズの、中でも一番のヒット作「犬神家の一族」の二番煎じもかくや。キャラクターだけではなく、一部、演出までヌケヌケと模倣している。石坂浩二が演じる金田一はフケが飛び散るボサボサ頭で、こちらの大学生探偵は天然パーマだが、遺産相続を巡る一族の足の引っ張り合いも共通する。と中盤までかなりシラケて観ていたのだが、ドッコイ、後半の展開にはアレヨ、アレヨ!

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    ドラマ版未見で予備知識なしで観ても問題なし。横溝正史パロディとは一線を画し、「犬神家の一族」を導入に用いて(06年版「犬神家」のキャストも登場)、似て非なる着地点へ。事件と謎解きが映画でやるスケールが不足だとか、一族の名前をテロップで出す非映画的な見せ方に引っかかるが、菅田の茫漠とした雰囲気とボソボソした喋りが魅せる。市川崑版「悪魔の手毬唄」を思わせる入浴シーンを見れば、菅田に金田一役をという願望が高まるが、本作での充実ぶりを見れば余計なことか。

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