野獣の血の映画専門家レビュー一覧

野獣の血

「善惡の刃」のチョン・ウ主演、極道たちの壮絶な末路を描いたキム・オンスの小説を映画化した韓国ノワール。釜山港の外れの街クアムを牛耳るソンに拾われたヒスは、ソンの右腕として街を仕切るようになるが、クアムを狙うヨンド派は彼を懐柔しようとするが……。韓国のベストセラー作家チョン・ミョングァンが本作で監督デビュー。1990年の盧泰愚大統領による犯罪組織一掃政策を背景に、激動の時代を生き抜くヤクザたちを活写した。共演は、「殺人の疑惑」のキム・ガプス、ドラマ『悪霊狩猟団:カウンターズ』のイ・ホンネほか。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    小さな港町が舞台。主人公の男はやたらみんなから挨拶される。地元の人たちから好かれているのがわかる。いいやつだ。義理と人情の板挟みになる。良かれと思ってやったことがことごとく裏目にでる。どっちを取ってもダメっていう状況設定はよく練られている。先が読めない。どんどん追い詰められていく男。さてどうする? 目が離せない。おっさんがバカでかいナイフを若者の腹に突き立てる。暴力描写はひたすら残忍。血の匂いがしてくる。アホな男たちはアホから逃れられない。

  • 文筆家/俳優

    睡蓮みどり

    やくざ映画の面白さとは何かということを少し前にずっと考えていて、いまだに答えが出せないままでいる。冒頭の演歌調の音楽の使い方など懐かしさがあり少しテンションがあがったものの、基本的にバイオレンスシーンが続き単調。施設育ちの仲間や恋人との関係などなど、人物像やストーリーに目新しいものがあるわけでなく、むしろ希薄な感じさえしてしまう。一匹狼の魅力的なキャラクターは国に関係なくこれまでも描かれてきた。新たなやくざ映画を現代に作るのは難しいのだろうか。

  • 映画批評家、都立大助教

    須藤健太郎

    そもそも設定に無茶があるのではないか。物語は類型に沿うもので、その点はジャンル映画においてはむしろ美徳でさえあるが、過酷な試練を通して人生を学び、幼馴染みに手を下し、ついには父殺しを経て一人前になるという、この「大人になるための通過儀礼」の主人公の年齢が40歳なのだ。結果、過去といえば30年前の養護院の思い出ばかりで、20?30代の記憶を欠いた、経験に乏しいいびつな中年男が出来上がる。「40代もまだ若い」というエールなら喜んで受け取るけれど。

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