銀河鉄道の父の映画専門家レビュー一覧
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
信頼できるキャストが揃い踏みしていることもあって安心してストーリーに身を任せることはできるが、宮沢賢治に思い入れがないせいもあるのだろう、最後まで本作の勘所をうまく?めなかった。善良な人間しか出てこない本作にあって、とりわけ主人公政次郎が体現する子供に異常なまでに寛容な父親像は、20世紀初頭の東北においてはユニークであったのかもしれないが、現代ではどこにでもいる父親としか思えず。それを先駆的と捉えるか凡庸と捉えるかで評価が分かれるのかもしれない。
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映画評論家
北川れい子
丸坊主がよく似合う賢治役の菅田将輝。丸メガネにチョビ髭の父親・政次郎役は役所広司。門井慶喜の原作では、賢治は結局、自分は父親の手のひらの中で青臭く遊んでいるのだ、と自覚するようになるのだが、本作では、いまで言う自分探しをしているような賢治と、そんな賢治に大甘な父親という構図になっていて、いささかありきたりな父と息子像に。とはいえ、生涯病弱で独身だった賢治が遺した作品の一節を、政次郎が口にするくだりは感動的で、役所広司の親バカぶり、見応えある。
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映画文筆系フリーライター。退役映写技師
千浦僚
宮沢賢治がその作品の表面上の雰囲気のような、無害で大人しい人間だったというのはよくある誤解。作品への誤解でもある。彼は生涯不犯の相当な難物、メルヘン極道とでもいうべき男で、普通の生活者の感覚を持たなかったからこそ大きな真実に触れ得た、それを書き得たのだと思う。クライマックスの、ねじこんできた百姓水澤紳吾とのやりとりはヒヤヒヤする。救済でなく一場の芝居をやりきっただけ、と。エンディング曲が壊滅的に合ってない。クラムボンならばなんとかしたか。
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