茶飲友達の映画専門家レビュー一覧

茶飲友達

「ソワレ」の外山文治監督による、2013年に高齢者売春クラブが摘発された事件を基にした群像劇。マナは高齢者専門の売春クラブ“茶飲友達(ティー・フレンド)”を設立。様々な事情を抱えるコールガールや組織を運営する若者らと家族のような絆を結ぶが……。ENBUゼミナールによる劇場映画製作企画『シネマプロジェクト』第10弾。高齢者の孤独に寄り添いながら自身も心に寂しさを抱える佐々木マナを演じた岡本玲をはじめ、33名がワークショップオーディションより選抜され出演し、社会の閉塞感や寂しさを抱えた者たちの姿を描く。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    今年は高齢者の性愛をやろうと思っていたら、こんな映画が出てきてしまった。芝居もでき絡みもやれる高齢の俳優をこれだけ集めるのは大変だったと思う。高齢者による高齢者への売春という目の付けどころもいい。ただどこかスケッチの感が拭えない。高齢者の孤独も若者の空虚も点描としては丁寧に描かれるが、それがドラマになる前に事件が起こり、人間は所詮身勝手という世界観に回収され、問題提起しか残らない。傑作になり得ただけに残念。ずっと気になっていた岡本玲、ついに開花。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    高齢者向けの売春クラブを若者たちによるコミュニティビジネスとして描くという大胆な発想に一本取られた。寄る辺ない高齢者たちの孤独も、斡旋する若者たちの閉塞感も実に生々しいのだ。女性起業家役の岡本玲が母親とのねじれた関係まで見事に演じている。老齢のコールガールたち、客たち一人ひとりの造型にも意を尽くしている。どちらの世代もステレオタイプの描写から逃れているから、芝居もスリリングだ。今の日本社会を如実に映し、結末の苦さが希望にも連なる。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    老いらくの生と性に肩入れする一方、何かと訳あり風の若者連中のチームにまつわる描写が希薄なため、手のひら返しのごとき仕打ちに遭い、夢見た“家族”が幻想にすぎず、呆気なく崩壊してしまう絶望感に、いまひとつ切実さが乏しい。厳格で威圧的だった母親との確執などを通し、人道的には正しくても必ずしも正義とは限らないと疑問を呈してきたはずなのに、最後に取り調べを担当する婦警の説教まがいの正論が妙に説得力があるのも、作品としてはマイナスに働き、蛇足に思えた。

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