スクロールの映画専門家レビュー一覧

スクロール

YOASOBIの大ヒット曲「ハルジオン」の原作者の橋爪駿輝が2017年に発表した同名小説を北村匠海×中川大志W主演で映画化。理想と現実のギャップに溺れながらも、友人の死をきっかけに、社会、そして自分と必死に向き合う若者たちの姿を描いた青春群像劇。学生時代に友だちだった〈僕〉とユウスケを、実際に子どもの頃からの知己だという北村匠海と中川大志が演じている。共演は〈僕〉とSNSでつながる〈私〉に古川琴音、ユウスケに結婚を強く願う菜穂に松岡茉優。監督は様々な映像ジャンルをクロスオーバーし、映画「CUBE 一度入ったら、最後」「その日、カレーライスができるまで」が話題となった清水康彦。さらに米津玄師、あいみょんなどのミュージックビデオを手掛ける川上智之が撮影監督を務めた。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    ティーンが主人公ならまだしも、表面的には社会に順応している20代の漠然とした「死にたい願望」ほど、それ以外の世代の観客にとってどうでもいいものはない。独りよがりなモノローグから始まる本作は、一度も地に足を着けることなくそのままふわふわとエンドロールまで通り過ぎていく。こんな安っぽいナルシシズムに塗れた話が、監督のオリジナル脚本ではなく原作ものであることにも驚く。作中人物が描いたとされるジャクソン・ポロックそのままの絵は何かの冗談なのだろうか?

  • 映画評論家

    北川れい子

    歩いている男の背中に、死にたい、この絶望が続くならこの世を去ろうと男は心に決めた、という声が被さる。誰の声? 思わせぶりな出だしにゲンナリする。かと思えば職場の上司に理不尽なことを言われ、死にたいと呟く男子が登場、さらにその理不尽上司に、マジ死んで欲しいと叫んで仕事を辞める女子がいたり。おいおい、いくら現代が生きづらいからといって、こう簡単に死を口にするなよ。中盤からは男女の群像劇に移行するが、それもシニカル気どりのポーズ先行、もう手に負えん。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    画面もきれいだし題材も面白いし、まあ普通と思ってもよかったが、世代の違いか、本作の作り手がするっと語ることのなかにいくつも引っかかりを感じてそこが非常につらい。死ぬ死ぬ死ねの連発だがあのパワハラ上司の描写だけだと話が小さい。そのくせ同窓生の過労鬱自殺逸話は薄めてくる。本作に限らぬ新しめの映画の多くがそうだが男女関係ですぐ「無理」とか言う。自分が社会に対して何をするかが大事とか。こういう、人間を矮小化するもの、殺しにかかってくるものは認めない。

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