チョコレートな人々の映画専門家レビュー一覧
チョコレートな人々
多様な人が働くチョコレートブランド『久遠チョコレート』のドキュメンタリー。全国に52の拠点を持ち、こだわりのフレーバーや彩り豊かなデザインが人気の久遠チョコレートは、心や体に障がいがある人など様々な人たちが働きやすい職場づくりを続けている。「人生フルーツ」の東海テレビによる2021年日本民間放送連盟賞テレビ部門グランプリ受賞作を映画化。監督は、「青空どろぼう」の鈴木祐司。ナレーションは、「メタモルフォーゼの縁側」の宮本信子。
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
全体の構成が行き当たりばったりで、テレビのドキュメンタリー番組の長尺版を見ているような感覚になってしまった。作品の成り立ちとしてはそれでいいのかもしれないし、地方局制作のドキュメンタリーが全国で見られる機会としての「劇場版」ということなのだろうが。また、作品の中心である夏目浩次氏への客観的な視点が乏しく、カメラもナレーションもその肩越しからしか描かれないので、氏が掲げる理想や大義に強いシンパシーを抱いていることが前提になってしまっている。
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映画評論家
北川れい子
以前、友人から久遠チョコレートを手土産にもらったことがある。いまいち、よそ行き感のあるスイーツ。そのとき久遠チョコの背景を聞いてはいたが、このドキュメンタリーで改めてチョコの底力を感じた。久遠チョコを立ち上げた夏目さんの思いと覚悟。ここで働くさまざまな人たち。障害があっても可能な仕事、いやその人に向いた仕事を用意すること。ときにはわざわざ設備の変更まで。ただビジネスとのバランスも重要なはずなのに、そのあたりの取材情報がないのがちと気になる。
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映画文筆系フリーライター。退役映写技師
千浦僚
課されてしまったバリアでその人の人生が狭められることを良しとしない久遠チョコレート夏目社長のまっとうさと道義は間違いなくこのチョコを美味しくしている。私は本作を観て他のものよりこのチョコを食べたいと思う。夏目氏は自らの方向性が通用すると証明するためチョコギフト市場の1%、40億を売り上げたいというリアリストでもある。これは宮本信子(ナレーション)、本多俊之(音楽)が思い出させる伊丹十三映画の主人公の行動、金銭や市場原理に正義を刺す闘いに似る。
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