あつい胸さわぎの映画専門家レビュー一覧

あつい胸さわぎ

演劇ユニットiakuの横山拓也が作・演出を務め、大きな話題を呼んだ傑作舞台を映画化。港町の古い一軒家で母・昭子と慎ましく暮らす武藤千夏は、小説家を目指して芸大に合格。ある日、昭子は千夏の部屋で“乳がん検診の再検査”の通知を見つけてしまう。出演は「メイヘムガールズ」の吉田美月喜、「われ弱ければ 矢嶋楫子伝」の常盤貴子、「もっと超越した所へ。」の前田敦子、「マイスモールランド」の奥平大兼。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    あらすじに目を通したときの先入観を、心地よく裏切ってくれる良作だ。シリアスな題材やモチーフを扱いながらも、例えば、主人公が橋を渡っている最中、?におしっこをかけられた幼馴染の初恋相手と戯れ合うといった、なんでもないシーンが忘れ難い輝きを放っている。近年、継続的に役の大小を問わず(もっと言うなら企画の筋の良し悪しを問わず)映画に出まくってきた前田敦子が、すっかり作品の質を下支えする名バイプレイヤーに成長していることにも改めて感心させられた。

  • 映画評論家

    北川れい子

    本作のまつむら監督自身の脚本、編集による前作「恋とさよならとハワイ」を観たとき、今泉力哉監督系の恋愛専科の監督という印象を持ったりしたのだが、なかなかどうして注目したい監督、そして愛すべき本作である。基になっている舞台劇のことは全く知らないが、周辺の大学生の娘とその母親をはじめ、どのキャラクターにも生活感があり、演出、演技も軽妙。若年性乳がんという大ごともドカンとした扱いはしていない。キャスティングもドンピシャで、ロケ地も効果的。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    原作は知るひとぞ知る戯曲だそうだが、確かにすごく話が面白い。見ごたえある女性映画だった。難病もの、余命ものに対する批評のようにも感じる。死は回避できるかわりに青春や女であることを切り捨てなくてはならないかもという岐路。ヒロイン吉田美月喜は、どうしていいかわかんないんだよ!という役柄の思いをそのままに見せていた。その脇を固める役者陣の解像度と存在感がすごい。常盤貴子の関西弁の声音、大人の女らしさが見事な前田敦子、不器用さで押してくる三浦誠己。

1 - 3件表示/全3件