ミスター・ランズベルギスの映画専門家レビュー一覧

ミスター・ランズベルギス

1991年にリトアニアをソ連から独立に導いたヴィータウタス・ランズベルギスが熾烈な文化的抵抗と政治的闘争を語るドキュメンタリー。ランズベルギス本人の語りと独立まで各地で撮影されてきたアーカイヴ映像を組み合わせ、独立とその先のソ連崩壊を描く。監督は、「国葬」のセルゲイ・ロズニツァ。アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭最優秀作品賞、最優秀編集賞受賞。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    手持ちのビデオ画面。砲撃の音。煙。叫び声。何よりそこに集まる人々の顔、顔、顔。名もなき市民の顔がしっかり映されている。撃たれても踏み潰されても抵抗することなくただそこに居座り続ける彼らの顔がずっと頭に残っている。刻々と変わる状況にドキドキハラハラが止まらない。図らずもめっちゃエンタメしている。ランズベルギスが超かっこいい。カメラ目線の彼に惚れる。政治家ってこんな格好良かったんだと気付かされる。4時間ぐらいあるけどまだまだもっと見たかった。

  • 文筆家/俳優

    唾蓮みどり

    ランズベルギスの頭の中には、ずっと鮮明に残っているのだろう。圧倒的に聡明さを感じさせる優雅な語りと、歴史を裏付ける膨大な映像の数々によって、リトアニア独立における信念が浮き彫りになってくる。とにかく驚きの連続だ。非暴力を求め、国民の代弁者としてのランズベルギスと対照的なゴルバチョフの像。まさに現在への批評とも受け取れる必見の一作。政治家とは国民の代表に過ぎない、が、それを体現することは難しい。国が国として存在するとは何か、考えさせられる。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    前作「バビ・ヤール」(21)ではアーカイヴ映像のスペクタクル化が図られた。今作ではアーカイヴに「記録」という地位が与えられ、30年前を語るランズベルギスの「記憶」と対をなす。記録と記憶の平行モンタージュというわけだ。しかし、単に過去に迫るのではない。製作開始は20年3月。ソ連の暴力に屈せず独立を勝ち取るリトアニアの歴史を前に、多くの観客がロシアによる侵略に抵抗し続けるウクライナの現在を想起することだろう。この接続を是とするか非とするか。

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