ドリーム・ホースの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
上島春彦
英国ウェールズ地方、谷あいの僻村の清涼な空気感がいい。組合組織の共同馬主というシステムは実話に基づくとのこと。競馬映画というのはフランク・キャプラの「其の夜の真心」が典型だが、走らせる側の経済事情をリアルに描き出して初めて面白くなる。本作ではそこに加えて馬主代表の主婦とその夫のぎくしゃくした関係が抜群。もちろん関係改善の過程がいいのだ。多幸感あふれるエンディング・クレジット、〈デライラ〉の大合唱も楽しい。歌手トム・ジョーンズはウェールズの誇り。
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映画執筆家
児玉美月
ムラ社会における「主婦」の鬱屈とした人生を、無関心な夫の態度、やり過ごすだけのパートタイムの仕事、親のケア労働などの描写の連なりによって開巻から伝えてゆくが、フェミニズム的な主題はそこまで広がりを見せない。あまりにトントン拍子にことが運んでゆく説話構造には、「実話である」というエクスキューズが予め用意されている。嫌味がなくウェルメイドな本作は観客に好かれるかもしれないが、ゆえに多くの類型の映画に埋没しやすく深く心に突き刺さるような作品ではない。
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映画監督
宮崎大祐
実話に基づいているためか、世界のやさしさに甘んじ、物語はつつがなく進んでいく。しかし演出は非常に丁寧で、フレームの中いっぱいに広がるウェールズの景色はただただ美しい。そこでは人と馬を中心にさまざまな動物がたしかに息づいていて、もはや今の世界に必要なのはこれだけなのではないかという気すらする。あとは「うまい」トニ・コレットとオーウェン・ティールの芝居に身を任せて、マニックスを歌うのが大好きで陽気な町人たちが愛情を交わすのを見ているだけでいい。
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