少女は卒業しないの映画専門家レビュー一覧

少女は卒業しない

直木賞作家・朝井リョウの同名連作短編小説を映画化。廃校が決まり、校舎の取り壊しを目前に控えたとある地方高校を舞台に、世界のすべてだった“学校”と“恋”にさよならを告げる4人の少女たちの卒業式までの2日間が描かれる。監督・脚本を手掛けたのは、LGBTをテーマにした短編映画「カランコエの花」が話題を呼んだ中川駿。料理部部長の主人公・山城まなみを演じた河合優実が本作で初主演を飾った。また、バスケ部部長・後藤由貴役に小野莉奈、軽音部部長の神田杏子役に小宮山莉渚、クラスに馴染めず図書室に通う作田詩織役に中井友望。その他、窪塚愛流、佐藤緋美、宇佐卓真、藤原季節ら、最旬の俳優が出演。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    今や日本映画界のキーパーソンと言ってもいい活躍ぶりの河合優実を筆頭に、生徒役の役者はみな魅力的に撮れている。複数のストーリーラインを併走させながら、どのストーリーラインも妙に間延びしているというのも、ナラティブとして新鮮。ただ、それぞれの生徒たちが抱えている葛藤が、当事者以外にとってはどうでもいいことばかりなので、映画ならではの吸引力を生み出すには到ってない。それがこの作品の狙いであるならば、原作の映画化としてはほぼ完璧なのだろうが。

  • 映画評論家

    北川れい子

    高校卒業直前の生徒たちの2日間をスケッチふうに描いた群像劇で、スケッチといってもそれぞれのキャラのデッサンはかなりしっかりしていて、これが長篇第1作の中川駿監督、テンポのいい会話のやり取りを含め、実に巧みである。10名以上の生徒たちの状況や立ち位置が時間とともに見えてきて、このあたりの演出も鮮やか。彼らの卒業後、この高校が廃校になることが決まっていて、でも感傷より足元の不安。生徒たちの雑念を浄化させるような〈ダニ-・ボ-イ〉の歌と花火も効果的。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    なるほど! 卒業式という祭りが「グランド・ホテル」的な枠組みになる、と。高校生活ものなら文化祭というイベントもあるが、卒業式のほうが区切りとして強いし、各個、各グループの行動の幅が出る。面白い。河合優実の存在感とちょっとしたサプライズ的な見せ方。まさか国連の加盟国が193カ国あるということに泣かされそうになるとは思わなかった。いや泣かないが。佐藤緋美のアイルランド民謡とそれを見る小宮山莉渚もよかった。ネタを盛り込める大枠でもうできたという映画。

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