エンドロールのつづきの映画専門家レビュー一覧

エンドロールのつづき

監督・脚本を務めたパン・ナリンの実体験を映画化したドラマ。インドの田舎町で父親のチャイ店を手伝う9歳のサマイ。ある日、家族で行った映画館で映画に魅了された彼は、たびたび映画館に忍び込むようになり、映写技師のファザルとある約束をするが……。主演を務めるのは、オーディションで抜擢され、本作が演技初挑戦となるバヴィン・ラバリ。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    言ってしまえばインド版「ニュー・シネマ・パラダイス」なわけだが、子供たちがフィルム上映の魔法に目覚めていく展開が胸を打つ一方、監督のボリウッド映画への愛着はさほど伝わってこない作りになっており困惑。線路を走る見慣れない小型の四輪車など様々な乗り物の運動を捉えたショット群は、リュミエール兄弟など初期映画への目配せなのだろうが、今ひとつ決まっておらず、タラにまで言及しておいてシャマランを無視するラストも不可解。ただ、料理描写はいずれも至高。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    「ニュー・シネマ・パラダイス」に酷似してはいるが、本家にあった強烈な映画への郷愁は比較的抑えられており、そのかわりに本作ではインドの文化や風習などを存分に利かせる。映画の本筋とはあまり関係のなさそうな、インド家庭料理のチャパティとスパイス料理の執着はすごく、確かに美味しそう。また、子どもたち同士で映画館と映写機を作ってしまう、見る者の少年心をくすぐるはずの秘密基地づくりシーンは、映画館の完成度が高過ぎて、くすぐりきれていないところが惜しい。

  • 文筆業

    八幡橙

    自分以上の映画好きはいないと語るパン・ナリンが脚本を書き、監督した、映画愛に満ち満ちた自伝的作品。子どもと映写室の掛け合わせを見るまでもなく、イタリアの、あの映画を露骨に思い起こさせる。映画という“光”に魅了された少年は無垢で愛らしく、母の作る手料理は色鮮やかで美味しそう。こだわりの光の描写も繊細で、実に美しい。だが、最後まで少年が監督の大人の目線や思惑通り右に左に動かされるコマにしか見えず、鼻白んだ。自身の郷愁を引いて撮ることは難しい。

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