そして僕は途方に暮れるの映画専門家レビュー一覧

そして僕は途方に暮れる

「娼年」の三浦大輔作・演出、Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔主演の同名舞台を三浦・藤ヶ谷の再タッグで映画化。裕一は同棲中の恋人と言い合いになり、家を飛び出す。その夜から親友、姉などの家を渡り歩くが、ばつが悪くなるとその場を逃げ出してしまう。出演は、「もっと超越した所へ。」の前田敦子、「ウェディング・ハイ」の中尾明慶、「ビリーバーズ」の毎熊克哉。第35回東京国際映画祭ガラ・セレクション部門正式出品作品。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    「愛の渦」池松壮亮、「何者」佐藤健、「娼年」松坂桃李と、これまでも三浦大輔監督は若い男性俳優のポテンシャルを引き出す際に見事な手腕を見せてきたが、本作でどうしようもないクズ男を演じている藤ヶ谷太輔は、あまり出演作に恵まれてこなかったことに恨み言を言いたくなってしまうほど魅力的。シネマスコープで映し出される苫小牧の風景、キャプラ「素晴らしき哉、人生!」への気の利いたレファレンスなど、舞台の映画化という意味においても隅々まで「映画」の必然に満ちている。

  • 映画評論家

    北川れい子

    「愛の渦」然り、「娼年」然り、三浦大輔監督の作品は、ドラマ性より人間観察的で、それもかなり極端で生臭い。ロードムービー仕立ての本作は、三浦監督が手掛けた舞台劇の映画化だそうで、人間観察と人間関係というドラマが互いに追っかけっこしているのがミソか。とはいえ、吹けば飛ぶような自己チューの甘ちゃん男を、人間関係という流れで北海道まで泳がせてしまうとは。主人公のキャラに共感する気はないが、藤ヶ谷太輔の途方に暮れ顔にムリがなく、ついズルズルと引っ張られた。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    不足ないキャスティングと熱演、脚本演出の工夫により飽きずに観ながら、いちゃもんのようにもっと面白いかどうかをも振り切った独自の深さを求めてしまった。それは失踪、蒸発という行動について旧くは67年の今村昌平「人間蒸発」(蒸発者を追うモキュメンタリー)と若松孝二「性の放浪」(「人間蒸発」への返歌)があり、ごく最近では「ある男」というなりすましを発端として人のアイデンティティを問う秀作もあったため、私の本作を享受するための余地は狭かった。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事