戦場記者の映画専門家レビュー一覧

戦場記者

戦争の被害者は一体誰なのか――。ガザ、ウクライナ、アフガニスタンなど、世界の戦地を徹底的に取材して歩く戦場記者、須賀川拓(ひろし)が突きつける理不尽かつ残酷な現実。それは、決して「対岸の火事」ではない、あまりに過酷な世界の危機を伝えるドキュメンタリー。監督でありレポーターの須賀川は、TBSテレビに在籍し、中東支局長として現在ロンドンを拠点に、世界中を飛び回る特派員。2022年3月開催のTBSドキュメンタリー映画祭で上映された『戦争の狂気 中東特派員が見たガザ紛争の現実』を基に、さらなる取材を重ね、さまざまな地域の戦場の実態レポートを拡充した。また、それを世界に発信するために粉骨砕身する自らのストーリーも重ね合わせ、よりグローバルで、ドラマチックな内容となっている。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    伝え続けなければと戦場記者は言う。結局何も変えられないけれどとも。それだけの自覚があるなら、それを逆転させる力のある映画が見たかった。パレスチナ、ウクライナ、アフガン。しかし映画でしか見れない映像はついぞ現れない。テレビならNHKスペシャルに遠く及ばず。戦場記者による戦場案内。しかも最前線ではない。TBSの社員だから仕方ないのか。本当に危ないところはフリーが行ってるしな。大仰な音楽。そんなもので映画にはならない。映画だって戦場だ。舐めるな。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    TBSの中東支局長、須賀川拓記者がガザ、ウクライナなどの紛争地を取材する姿を追う。対立する両者に取材を重ねて紛争地の現実に迫り、SNSも駆使して発信する記者の姿勢に共感するし、優れた仕事に敬意を表したい。ただこれを映画作品として評価するのは難しい。さまざまな現場から須賀川氏の活躍と誠実さは伝わるが、個々の紛争の深層に迫るのは別の機会を待つしかない。記者を志す日本の若者には薦めるが、世界の観客の鑑賞には堪えうるだろうか。そういう意味でテレビ的な企画。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    “戦場記者”と銘打つも、アフガニスタンにおける、通常の報道でも見落とされがちな薬物依存者が埋めつくす溜まり場の惨状が、ガザやウクライナの紛争の生々しい傷跡をも凌駕する衝撃を放ち、生きることこそ闘いなのかと言葉を失う。時には取材対象の私生活にも立ち入る自身の仕事に対し、直接的には誰も救えぬ無力感や“偽善”なる疑念に襲われつつ、自問自答を続ける須賀川氏のジャーナリスト然としていない親しみやすい実直さに、世界情勢の混迷を、一層身近に痛感させられる。

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