ペルシャン・レッスン 戦場の教室の映画専門家レビュー一覧

ペルシャン・レッスン 戦場の教室

ナチスの収容所で偽のペルシャ語を教えることで生き延びようとするユダヤ人の姿を描いたドラマ。ナチス親衛隊に捕まったジルは、自分はペルシャ人だと嘘をつく。すると、終戦後にテヘランで料理店を開く夢を持つ大尉から、ペルシャ語を教えるよう命じられる。監督は、「砂と霧の家」のヴァディム・パールマン。出演は、「BPM ビート・パー・ミニット」のナウエル・ペレーズ・ビスカヤート、「約束の宇宙(そら)」のラース・アイディンガー。ベルリン国際映画祭ベルリナーレ・スペシャルガラ部門上映作品。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    収容所へ運ばれる途中、全員トラックから降ろされ並べられる。パンパンと乾いた銃声。バタバタ人が死んでいく。無残極まりない。男は殺される寸前わざと前に倒れる。咄嗟に嘘をつく。ペルシャ語など喋れないのにペルシャ人だと言い張る。その嘘がいつバレるか、そこがサスペンスになっていく。いくつもの偶然に助けられながら男は、窮地をなんとか逃れる。言っちゃえばそれだけの話。男のキャラクターがよくわからない。どこかでわかるのかと思ったら最後まで謎だった。

  • 文筆家/俳優

    唾蓮みどり

    ナチスの捕虜下で生き残るために架空のペルシャ語を話すという設定自体は新しく興味惹かれるが、ホロコーストを題材にした映画としては、これといった目新しさは感じられない気がして少し残念ではある。嘘が見破られるかどうか、生きるか死ぬかという物語なので当然といえば当然だが、最初から最後まで緊張感あふれるシーンが続く。少々真面目すぎるような気もするものの、映像も美しく、主人公がどうなっていくのかラストシーンにいたるまで始終、興味深く引き込まれた。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    私は収容所映画のエンタメ化にはいまだに抵抗がある。強制収容所が作劇の効果を得るための舞台として利用される場合はなおさらである。大尉がペルシャ人になりすますレザことジルに寄せる特別な感情は恋とは名指されることのない恋にほかならず、2人にしか通じないでっちあげの「ペルシャ語」でやりとりをする大尉とジルは、恋人たちが他人には通じない言葉で会話することの謂いのつもりなのだろう。最後に自信満々で見せられるエピローグにしても、巧みであればあるだけ品がない。

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