近江商人、走る!の映画専門家レビュー一覧

近江商人、走る!

大坂商人、伊勢商人と並ぶ「日本三大商人」のひとつであり、現在の滋賀県をベースに全国を駆けまわった「近江商人」の活躍を描く痛快ビジネス時代劇。商いの才と人情に長けた近江商人の銀次が、ある時は怪我をした職人や閑古鳥が鳴く茶屋をアイデアで助け、ある時は店の大借金返済に知恵で挑む。主役の銀次に抜擢されたのは、主演デビュー作「許された子どもたち」で「毎日映画コンクール」 スポニチグランプリ新人賞を受賞した上村侑。銀次を支える先輩の蔵之介には「ちはやふる」シリーズの森永悠希。加えて「アルプススタンドのはしの方」の黒木ひかり、AKB 出身で「リンキング・ラブ」の田野優花、「ハケンアニメ!」の前野朋哉など、個性あふれる俳優が結集。筧利夫、真飛聖、矢柴俊博、堀部圭亮、渡辺裕之、藤岡弘、といったベテラン勢が脇を固める。監督は「老人ファーム」「鬼が笑う」の三野龍一。無理難題に挫けず、あっと驚く発想で難局を乗り切る、今の日本に必要な“商人ヒーロー”が誕生した。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    三野龍一監督、前作「鬼が笑う」の短評では題材の現代性とキャラクターの古典性の齟齬について触れたが、まさかキャラクターを現代に寄せてくるのではなく題材を古典に寄せてくるとは。メジャー配給のスターキャスト作品ではなくても、こういう企画が成り立つことにも驚き。しかも、セットや衣裳にも安っぽいところがない。とはいえ、茶屋娘をグループアイドル的に描いたくだりを筆頭に、どのような観客層(少なくとも自分は入ってない)に向けた作品なのかは最後まで謎だった。

  • 映画評論家

    北川れい子

    差別や偏見の現場を描いた「鬼が笑う」の監督が、時代劇を撮るということでかなり期待したのだが、ゴメン、これはイタダケない。エンタメに特化した時代劇という狙いはいいとしても、脚本も演出もあまりにも雑で、まったく本気で観ていられない。冒頭、山あいの畑で親子が収穫した大根を荷車に積んでいるのだが、この大根がスーパーで売っているのと同じ葉が切られた真っ白な大根で、えっ、泥付きじゃないんだ! 大津奉行の変態ぶりもえげつない限りで、何なのこの映画!

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    いわゆる古典名作時代劇でも結局は現代の眼で見てわかるように面白みがあるようにデフォルメはしているのだから、本作のような大嘘、遊びはどんどんやればよいと思う。アイドル人気投票をヲタ芸で応援するんかい! とは思わない。いや思うけどかまわない。物語や主題や史観がちゃんとあれば。農民町人の武士階級への怒りや抗いはよかったがそれがまたさらに上層の正しい侍によって決着するのはひっかかる。裏切り者を再び信じることが最大の勝機・商機という展開は良い。

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