警官の血の映画専門家レビュー一覧

警官の血

佐々木譲の同名警察小説を韓国実力派キャストで映画化。一人の警官の死をきっかけに、事件の黒幕として浮上したエース刑事パク・ガンユン。新人刑事チェ・ミンジェがその身辺捜査をするなかで、警察内部の不正行為や殉職した警官の父の死の真相に迫っていく。出演は、「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」のチョ・ジヌン、「パラサイト 半地下の家族」のチェ・ウシク、「V.I.P. 修羅の獣たち」のパク・ヒスン、「ファイティン!」のクォン・ユル、ドラマ『愛の不時着』のパク・ミョンフン。監督は、「カエル少年失踪殺人事件」のイ・ギュマン。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    日本の小説が原作ということもあってか、ストレートな形ではないにせよ、韓国映画ではその無能さや腐敗ぶりが強調されがちな警察の矜持を描いている点はやや新鮮か。真っ直ぐで融通の利かない主人公と、目的達成のためには手段を選ばないグレーゾーンに立つ班長の仕事ぶりを対比する構成は悪くないが、意外な繋がりの発見や転調が説明台詞によってもたらされることが多いのは映画として勿体無い。ここぞという場面での安直なスローモーションの使用など、撮影にも冴えが見られず。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    真相に辿り着くまでに細かいプロセスや思考過程が分かりづらいところが多々あるが、警察の汚職を暴く、内偵調査ものであり、かつ一緒に事件を捜査していくバディもの、さらにいえば擬似親子ものでもある三重の関係性が、本作を最後まで緊張感のあるものにしている。この映画全体の緊張感に反して、内偵をしている刑事を演じたチェ・ウシクのとぼけた表情と、それに似合わぬ戦闘能力の高さも、内偵という裏と表のある人物としてとてもうまく機能しているように見え、面白い。

  • 文筆業

    八幡橙

    三世代を描く原作から、三代目である主人公とその父に照準を絞った韓国版。潜入モノ独自の緊張感や真相にじわじわ迫るサスペンスを基軸としているが、とりわけ上司を内偵する主人公と謎めいた上司、二人の少しずつ距離を変えゆく師弟、または疑似兄弟とも言える繋がりに重きを置いた視点が肝に。汚職警官の物語は、こと韓国には山ほどあるが、“白でも黒でもない、グレイであり続けることの難しさと意義”を問うテーマが心地よく着地。主演二人の“ケミ(化学反応)”も絶妙。

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