ソウル・オブ・ワインの映画専門家レビュー一覧

ソウル・オブ・ワイン

    ワイン愛好家の聖地、フランスのブルゴーニュ地方を舞台に、ロマネ=コンティをはじめとする世界最高峰のワイン造りに魂を注ぐ人々に迫ったドキュメンタリー。ワイン界を代表する一流のスペシャリストたちを通してワインの「真髄」が見えてくる。監督のマリー・アンジュ・ゴルバネフスキーが、四季を通してワイン生産の貴重な舞台裏に入り、偉大なワイン(グラン・ヴァン)を追い求めて何世紀もの時を経て受け継がれる技と知恵、ワイン畑と人間の何世紀にもわたる関係を、ブルゴーニュ地方の美しい自然、詩的で芸術的な映像にのせて映し出す。
    • 映画評論家

      上島春彦

      農業ドキュメンタリーという分野は大好き。農耕馬の美しさ賢さを再確認できる好企画ともいえる。うねを耕す馬がカメラを気にして(目線で分かる)立ち止まるあたりのゆったりした画面はまさしく眼福也。良いワインは地層が作るのだ、という言葉が含蓄あり。評論家、学者、ソムリエのインタビューを組み込みつつも、やはり見どころは生産者(仕込むための木樽も含む)の一挙手一投足に尽きる。この映画を見るとむしろ、完成する前の濁っている状態のワインを飲みたくなるだろう。

    • 映画執筆家

      児玉美月

      パッケージ化されたワインが人の手に渡るまで、ブドウの一つ一つを手で摘んだり、それを地道に足で踏みつけたり、樽内をタワシで磨き上げたり、ワインを熟成させるために費やされる膨大な時間をこの映画はそのまま引き継ぎ、穏やかな時間がじっくりと工程を見せてゆく。そしてそれがこの映画の気品を醸成させている。ここではワインが人生に見立てられている。途中、緑生い茂る光景が広がるにもかかわらず、肥沃ではない畑で始まりと終わりが結ばれているのはそのためなのだろう。

    • 映画監督

      宮崎大祐

      日ごろ酒をほとんど飲まず、酒の中でもどこか高級な印象のあるワインとはまったくもって縁遠い筆者は「どうやらロマネ・コンティなる銘柄が世界一のワインらしい」というレベルの予備知識しか持っていなかったため、ワイン造りのドキュメンタリーに果たして興味が持てるだろうかという不安を抱えての鑑賞となったが、登場するソムリエ、ソムリエールたちが一流の詩人のような言葉をもって語るワインの味や深みについて聞いているうちに、気がついたらサイゼの片隅に着席していた。

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