デュアルの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
上島春彦
クローンと自分自身のバトルというのは映画ではお馴染みの主題である。物語解釈では昔からドッペルゲンガーとして知られる自己像幻視の心理現象。それが特にこのメディアと相性が良かった。複製像はこっちを必ず見下した態度を取るものらしいな。ヴァリエイションも様々。多元宇宙でジェット・リーが大勢の自分と闘ったりもした。しかしこの映画は、アクションあってこそという本来あるべき姿から離れている。無意味なクローン化のせいで自分も無意味になっちゃうという話かな。
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映画執筆家
児玉美月
辻褄の合わない世界に傀儡のような人間たちが蠢くあり様は、明らかにヨルゴス・ランティモスの映画にも接近する。だからこそそこでは、精緻に作り込まれているわけではない設定までが異様さへとなりうる。もしも自分とうりふたつのクローンが生まれたらどうするか、という命題から展開は二転三転してゆくが、行き着いた先の結末にはもう一捻り欲しかった。「ガンパウダー・ミルクシェイク」から続く、カレン・ギランの身体性を生かしたアクションやダンスシーンは一見の価値あり。
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映画監督
宮崎大祐
映画史の根幹に鎮座するドッペルゲンガーものということで期待していたが、冒頭の「決闘」シーンのサスペンス演出のつたなさから早くも暗雲が立ち込めはじめる。そもそもどうして死にゆく人間が自分の複製を作ろうとするのかまったくわからない。土台もなく出港した物語はただただ作者の都合によってある仕掛けに向け邁進し、なぜヒロインがこのような非人間的な人間になったのかという最低限の背景描写に停泊することもなく、自己満足の暗い海をさまよいつづける。
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