四畳半タイムマシンブルースの映画専門家レビュー一覧

四畳半タイムマシンブルース

2005年に刊行され、2010年にTVアニメとなった森見登美彦原作の『四畳半神話大系』と、2001年の初演以来4度の舞台化、2005年には実写映画化もされた上田誠(ヨーロッパ企画)の戯曲『サマータイムマシン・ブルース』がコラボレーションした小説を劇場アニメ化。京都のおんぼろアパート「下鴨幽水荘」で無為な青春を送る「私」は後輩の明石さんが気になりつつも、灼熱の8月にクーラーのリモコンを水没させてしまい大ピンチに陥る。『四畳半神話大系』のクセモノ揃いの登場人物たちが、真夏の京都を舞台にタイムマシンで昨日と今日を右往左往する。監督はTVアニメ『四畳半神話大系』と、アニメ映画「夜は短し歩けよ乙女」で、湯浅政明監督の主要スタッフとして参加した夏目真悟。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    原作の元になった小説『四畳半神話大系』と戯曲『サマータイムマシン・ブルース』に加えて、それぞれのアニメ化作品や実写化作品などハイコンテクストな背景を持つ本作だが、一本の映画として向き合うなら、そのあまりに特異な文体に面食らわずにはいられない。説明台詞の洪水は昨今のアニメ作品において珍しくはないが、本作は行間すべてを状況描写と心の葛藤と妄想のナレーションで埋め尽くす。丁寧にデザインされた作品ではあるが、観客としての想像力をここまで制限されたくない。

  • 映画評論家

    北川れい子

    昭和的なバンカラ人間がとぐろを巻いている京都の下宿屋の大騒動。猛暑の苛立ちとお節介な役立たずが右往左往しての進行は、タイムスリップとか、宇宙消滅とかややこしいが、テンポと勢い、そして「私」の無機質な早口台詞に飲みこまれ、ただアレヨアレヨ。個人的には同じ森見登美彦原作を湯浅政明監督がアニメ化した「夜は短し歩けよ乙女」の方が好きだが、これはこれで十分面白く、上田誠戯曲との合体、成功度は高い。もちろんキャラクターデザインも、音楽も言うことなし。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    京大の習俗ほどではないが私も90年代に大阪の辺境大学の映画研究会に属していたので奇人にまみれて奇行が常態化し、最初に住んだ酷暑のアパートに耐えかねて十回生の先輩の住まいを譲り受けて住み替えたがそれを大家に無断でやって仰天した大家に厳重注意される(当たり前だ)などしていたので本作のムードはわかる。ただ、今の学生はこういう青春奇行をしてるのか。してほしい。05年の実写映画「サマータイムマシン・ブルース」よりも格段に面白くなった変奏、アニメ化だった。

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