七人樂隊の映画専門家レビュー一覧

七人樂隊

「ホワイト・バレット」のジョニー・トー監督がプロデュース、「燃えよデブゴン」のサモ・ハン監督ら香港を代表する7人の監督がそれぞれ1950年代から未来までの各時代を1つずつ担当し香港の人々の生活を描く、全編35mmフィルムで撮影されたオムニバス。サモ・ハン監督による「稽古」、「桃さんのしあわせ」のアン・ホイ監督による「校長先生」、「風にバラは散った」などの監督作の他ウォン・カーウァイ監督作「欲望の翼」「楽園の瑕」の編集を手がけたパトリック・タム監督による「別れの夜」、「スネーキーモンキー 蛇拳」「ドランクモンキー 酔拳」などの監督作の他「マトリックス」シリーズなど多数の作品のアクション監督を務めるユエン・ウーピン監督による「回帰」、ジョニー・トー監督による「ぼろ儲け」、「友よ風の彼方に」のリンゴ・ラム監督の遺作となった「道に迷う」、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズのツイ・ハーク監督による「深い会話」を収録。第73回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション選出作品。第21回東京フィルメックスにて観客賞を受賞(映画祭タイトル「七人楽隊」)。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    香港の歴史をいま記録することに価値があるのは間違いないが、各作品の短さに加え、舞台となる年代をランダムに決めた経緯もあってか、出来にややばらつきが出てしまった感はあるか。当時の株に関するニュースを扱っているはずが、なぜか食卓を囲んでの会話の面白さの方が気になってくる点がいかにも彼らしいジョニー・トー「ぼろ儲け」、私の推しラム・シュや企画参加者でもあるアン・ホイもいい味を出している狂騒的な会話劇、ツイ・ハーク「深い会話」のユーモアに特に惹かれた。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    香港の映画監督たち七人がそれぞれ、ある時代の香港の郷愁を綴る。興味深いのは、時代を描くにあたって、その多くが人間関係のあり方に着目している点だ。師弟や先生と生徒、恋人という関係性は、今と昔でそのあり様は変化したかもと投げかけているようだし、新しい価値観や社会に頑固に距離を取る祖父や父親と孫や息子を対比させたりもする。そのなかで、2000年代に起きた大きな事件と移り変わりを、株価という数字でコミカルに見せていくジョニー・トーの短篇が際立つ。

  • 文筆業

    八幡橙

    旧き良き時代の残り香が立ち上る、黄金期を支えた名匠たちによる七篇。SARSから香港を救うべく製作された「1:99 電影行動」(03)より約二十年が過ぎ、状況も一変した。いかなる苦境にもどっこい負けぬ図太い笑いは影を潜め、アン・ホイの「校長」、ユエン・ウーピン(主演はユン・ワー!)の「回帰」、これが遺作となってしまったリンゴ・ラムの「迷路」など、じんわり沁み入る叙情が残った。フランシス・ンやサイモン・ヤムが老境を演ずることにも、一入の感慨が。

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