クリーン ある殺し屋の献身の映画専門家レビュー一覧

クリーン ある殺し屋の献身

「戦場のピアニスト」でアカデミー主演男優賞を受賞したエイドリアン・ブロディ主演のアクションドラマ。かつては凄腕の殺し屋で、今は寡黙な清掃員として生きるクリーン。心を通わせた少女ディアンダをギャングから守るため再び銃を取り、孤独な戦いに挑む。出演は、「ジョーカー」のグレン・フレシュラー、「パージ 大統領令」のミケルティ・ウィリアムソン、「Mr.ノーバディ」のRZA。監督・製作・脚本は、『キラー・ドッグ』のポール・ソレット。
  • 映画評論家

    上島春彦

    ある時代以降の殺し屋映画の定型、即ち腐敗しきった街路をさまよう元殺し屋のラスト・ミッション、というコンセプトが決まっている。俳優エイドリアン・ブロディのワンマン企画(音楽まで彼)故に、細部のこだわりが心憎い。今はゴミ収集車を運転するブロディがリサイクル・ショップに持ち込む品々とか、銃じゃなく工具に執着するとかね。亡くした娘さんとの過去の事情が分かりにくいのが難だが、これがないと現在の展開が説得力をなくすから仕方がないか。正に驚きの一本也。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    ファーストショットで夜間撮影の美しさにほだされそうになるのも束の間、その後ほぼなにも起こらない。陰影を巧妙に取り入れた独自な映像が展開していきそうな期待を即座に裏切られてしまう。黒人のギャング集団と白人の主人公も、ステレオタイプな図式に陥っていないか。エイドリアン・ブロディが製作に手厚く関わり、彼の存在感がこの映画を支配していたとしても、どうにもならないほどあらゆる要素が奏功していない印象を受けた。熱意とは裏腹に、良作になり損ねた無念さが後を引く。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    いまは穏やかな暮らしを送っているものの人には言えない過去をもつアウトローが近しい者を傷つけられたことをきっかけに隠していた暴力性を炸裂させ復讐を成し遂げるという作劇は古今の映画作家たちによって反復されてきたモチーフであり、もはや独自のジャンルと呼んでもいい。その歴史に新たに加わることになる本作はブラック・カルチャーやドローン・ショットの導入など、新味もあって決して飽きさせないつくりにはなっているが、ウェルメイドがゆえの物足りなさも感じた。

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