空気殺人 TOXICの映画専門家レビュー一覧

空気殺人 TOXIC

韓国で多くの被害者が出た加湿器殺菌剤事件を基にした、「死体が消えた夜」のキム・サンギョン主演の社会派ドラマ。息子が肺の病に倒れ、妻も同じ病気で突然他界し、疑問を抱いた夫のテフンと義妹ヨンジュは加湿器用の殺菌剤に原因があると突き止めるが……。監督は、「君に泳げ!」のチョ・ヨンソン。家族の死の真相を追及し巨大企業に立ち向かうテフンをキム・サンギョンが、テフンと共に真相を追うヨンジュを「ミッション:ポッシブル」のイ・ソンビンが、テフンの妻ギルジュを「ヨコクソン」のソ・ヨンヒが演じる。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    いわゆる実録告発ものだが、「ダーク・ウォーターズ」などでは随所に見られた、ドキュメンタリーではない以上必須となるはずの語り口や撮影の工夫が十分に凝らされているようには思えず。最大の仕掛けは終盤のある種のどんでん返しだろうが、リアリティそっちのけでサプライズの効果を狙ったような演出が、実際の事件を扱った作品に対するものとして的確だったのかどうか。悪役のベタな人物像を含め、どこをどうエンタメとして肉付けするのかをめぐる判断にことごとく疑問が残った。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    謎の肺疾患の原因を探る、サスペンス風の立ち上がりを見せるも、その原因はいとも簡単に判明する。そのことに呆気に取られているとすぐに、本作は企業の商品を使用して健康被害を被った被害者たちが大企業を訴える裁判映画だったと気づかされる。しかし、論証の積み重ね、巧みな話術、法の隙間を突く奇抜なアイデアといった裁判映画の醍醐味は薄く、実は相手側の人物に隠された秘密があったという、単なる人物設定でしかない要素が最大の仕掛けとなっているところが少々残念。

  • 文筆業

    八幡橙

    前作「君に泳げ!」は邦題含め首を傾げたが、今回は実在する、記憶に新しい事件が下敷きに。チョ・ヨンソン監督は実話の重みを受け止めた上で、単なる事実の羅列でなく入り組んだ映画的構成を盛り込みエンタメとして昇華させようと尽力したのだろう。その熱意や強者VS弱者という他人事でない構図に、キム・サンギョン&ユン・ギョンホ、脂が乗った二人の渾身の演技など見るべきところは大いに感じた。ただ、ラストの蛇足感含め、意外性を狙うが余り無理をしすぎた面も少々。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事