ベルベット・クイーン ユキヒョウを探しての映画専門家レビュー一覧

ベルベット・クイーン ユキヒョウを探して

    野生動物写真家ヴァンサン・ミュニエと作家で地理学者であるシルヴァン・テッソンが、チベット高原を横断する旅程を綴ったドキュメンタリー。幻と言われるユキヒョウを探す二人の前には数々の希少動物が現れ、過酷な環境の中で生きるあるがままの姿を見せる。第47回仏セザール賞長編ドキュメンタリー最優秀賞、第27回仏リュミエールアワード長編ドキュメンタリー最優秀作品賞ほか、各国の映画祭で受賞。
    • 映画監督/脚本家

      いまおかしんじ

      ヴァンサン・ミュニエは、変わり者だ。そのひねくれ者に賛同するシルヴァン・テッソンの惚れこみぶりも笑ってしまう。この凸凹コンビがいい。チベットは寒い。その寒さが彼らの服装で分かる。メチャクチャ防寒対策してる。寒い中で、腹ばいになって何日も待つ。待っているときの彼らの楽しそうな顔を見てると、ホントこいつらアホやなと思う。動物が出てきたときの喜びようったらない。アホアホだ。チベットの子どもが出てくるのだが、動物を撮るように彼らを撮っていて、すごく可愛い。

    • 文筆家/女優

      唾蓮みどり

      ユキヒョウを求めて山を旅する静かな冒険。山と一体化するほどに人は大地と近く親密になり、身を潜めて出会いの瞬間を待っている。何かを攻略するのではない。ふたりの愛情と好奇心が画面から伝わってきて心揺さぶられる。台詞なのでは、と思うほど詩的な言葉と美しい映像が重なり見ていて飽きることがない。合間合間に登場する動物たちの思いがけない動きや表情に何度も驚かされる。山という舞台のなかで、決して自分たちが主人公ではないことを自覚しているふたりに敬意を。

    • 映画批評家、東京都立大助教

      須藤健太郎

      問題はユキヒョウと人間の切り返しだ。ユキヒョウの姿と、それを間近で見て(とはいえ百mの距離)、涙を流す男(とはいえ涙は凍って流れはしない)を切り返しで繋いでいる。これでは、すべてを人間ドラマの枠内に閉じ込めるだけだ。自然を賛美し、人間を批判していたので、さすがに拍子抜け。主題歌のサビは「我々は一人ではない」。そこに「Good news for my heart」とコーラスが入る(「こりゃひと安心」みたいなことか)。確信犯ならなお理解しがたい。

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