私を判ってくれないの映画専門家レビュー一覧

私を判ってくれない

2019年に公開された「夕陽のあと」に続き、鹿児島県長島町を舞台にしたヒューマンドラマ。東京から突然島に帰ってきた城子と、生まれてから30年以上島から出たことのない由記乃の物語を、前作で助監督を務めた近藤有希と水落拓平が監督し、2つの視点で描き出す。出演は「リアル鬼ごっこ」の平岡亜紀、監督・脚本・俳優などマルチに活躍する鈴木卓爾。2022年9月3日より鹿児島・ガーデンズシネマにて先行公開。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    自称女優が故郷に帰ってくる。普通は帰ってこられないのに帰ってくる。経済的困窮はアリバイでしかない。本当の理由が見えないからバカにしか見えない。中盤変わろうとするが、あんな理由で変われるなら今までだって変わっていたはず。映画時間内でしか存在しないキャラは魅力がない。後半、幼なじみ視点で冒頭からの時間が再現される。しかし種明かしと言える程のものは何もない。この程度なら同一時間軸で描くべき。なんか映画の基本が出来ていないというか。私は判ってあげられない。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    自分勝手な行動で周囲を振り回して、島中の嫌われ者となっている城子を演じる平岡亜紀の存在感が強烈。「勘違い」ぶりを全開にして突っ走りながら、どこか憎めない。媚びない人なのだ。困惑しながらも城子に付き合う町職員役の鈴木卓爾の受け方の演技もいい。ご当地映画の制作トラブルやら、過疎自治体の移住支援策やら、ありがちなトピックも絡めて軽快に見せる。後半は引っ込み思案の由記乃の視点で同じ物語を語り直し、対照的な二人の女性の生きづらさを浮かび上がらせる。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    撮影が中断された設定の場所で実際に映画を撮る、シニカルな面白さが活かされていない。長島町をアピールするご当地ものでもあるはずだが、わがままの範疇を超えた無礼な“女優”をはじめ、ひとも町も魅力的に描かれているとは言い難く、最終的に台詞に頼るのは、映画の敗北ではないか。一旦は故郷を離れた女性の体験を、留まり続ける女性の視点で捉え直す試みも、劇中で唯一対話が成立している“なんちゃってお見合い”シーン以外は新鮮な感慨に乏しく、冗長な印象を与える。

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