アートなんかいらない! Session1 惰性の王国の映画専門家レビュー一覧

アートなんかいらない! Session1 惰性の王国

「縄文にハマる人々」の山岡信貴が日本人にとってアートとは何なのかについて考察するドキュメンタリー。2部構成の前篇となるSession1は、全世界的なパンデミックが始まり、アート不要論も叫ばれる世間の流れにシンクロしつつ、アートの意味を探る。ナレーションは、作家の町田康。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    「現代社会におけるアートの役割とは何か?」というマキシマムなテーマを「アート不感症になったボク」のミニマムな視点から綴っていく二部作3時間強。まず、(自分にとっても多くの人にとっても)誰だかまったく知らない語り手の「アート不感症になったボク」という視点や感性を勝手に共有させられるのがツラい。そういう肥大化した自己と客観性の欠如は、図らずも現代アートの諸問題とも通じている。ただ、作中の一部美術関係者の言葉には耳を傾けるべきものがあった。

  • 映画評論家

    北川れい子

    アートといってもピンからキリまであり、すぐに崩れて消えてしまう飛行機雲だってアートと思えばアートになる。本作は、そんな混沌とした日本、そして世界のアート界の実情にあれこれイチャモン、いや疑問や質問を、実例を提示しながらぶつけていくのだが、それに応じる美術の専門家や関係者たちの饒舌と言うか、言葉数の多さはちょっと降参したくなるほどで、はっきり言って、耳から、いや右から左。発言者の映像がすべてモノクロなのは、何かの皮肉?第二部は気楽に楽しめる。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    長大だが無駄はない面白いドキュメンタリー。アート関係者インタビュイーらの証言ごとに幾つも発見があり、数枚ずつ目から鱗がはがれ、全篇観終えたら足元に鱗が山積みになる。町田康のイントネーションだけ関西弁ナレーションもいい。というかあのユーモアがなければ監督自身の問題である「アート不感症」に観客は不干渉となってついていけなかった。政治性に対する及び腰など、個人的な偏向も強い作品だが、本作が表すのは大きく普遍的なものであり、すげえ観てよかった。

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