紅花の守人 いのちを染めるの映画専門家レビュー一覧

紅花の守人 いのちを染める

    世界で初めて紅花の文化を守り継ぐ人々の姿を、栽培から染めに至るまで4年の歳月をかけて記録した長編ドキュメンタリー。ナレーションは高畑勲監督の「おもひでぽろぽろ」で、紅花農家に手伝いにいくタエ子の声を担当した今井美樹。監督は「世界一と言われた映画館」など、山形を舞台に数々の映像作品を発表している佐藤広一。化学染料では生み出すことのできない繊細な色合いを表現するため、昼夜を問わずに染めに没頭する守人たちが色彩巡礼の旅へと誘う。
    • 脚本家、映画監督

      井上淳一

      人生で一度たりとも興味を持ったことのなかったものを映画で知り、心動かされる。そんな幸運な体験を今回もまた。紅花は染料として珍重され、財を成した人が大勢いて、しかし化学染料に押され、戦中の食糧増産で禁止され、戦後に僅かな種から復活したなど、知らないことばかり。栽培するだけなら絶滅危惧種の保護でしかない。どう染料にするかだ、と栽培や染織に関わる人たち。こうやって文化は受け継がれる。みんな、いい顔をしている。自分はこういう顔で映画を作っているか。

    • 日本経済新聞編集委員

      古賀重樹

      知らなかった。紅花が中近東から伝わってきたことも、染色の工程が独特であることも、その技術が日本にしか残っていないことも、高貴な色だが繊細で褪せやすく、戦時下に栽培を禁止されたことも。そんな紅花染めを守ろうとする人々が実に魅力的に映っている。栽培する人、染める人、触媒材を作る人。紅花に魅せられ、決して声高ではないが、仕事に誇りをもっている。そんな清々しさが、映画の清々しさとなっている。山形生まれの監督とプロデューサーが虚心坦懐に撮った紅花の映画。

    • 映画評論家

      服部香穂里

      戦後に一度は途絶えた紅花栽培を復興させ、時にはご近所さんも総動員して手摘みした花を、手間暇かけて“紅餅”なる染料に加工する工程は、知らないことだらけで興味津々。紅花産業の盛衰の歴史に加え、天然素材や染めにまつわる、苦楽を共有してきた夫婦や親子のドラマがメインとなっているが、口々に語られる紅色の特別な豊かさや儚い美しさについても、もっと具体的に映像で捉えられていれば、紅花に魅了されてきた彼らの貢献や功績が、より身をもって実感できたように思う。

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