フラッグ・デイ 父を想う日の映画専門家レビュー一覧

フラッグ・デイ 父を想う日

監督・主演を兼任したショーン・ペンが、構想15年を費やして衝撃の実話を映画化。1992年。裁判を控えた米国最大級の贋札犯ジョンが逃亡する。史上最高額の贋札を偽造したジョンの実像とは? 父に変わらぬ愛情を抱き続ける娘ジェニファーとの関係とは? 共演はショーン・ペンの娘ディラン・ペン、「アベンジャーズ/エンドゲーム」のジョシュ・ブローリン。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    やることなすこといい加減。どうしようもないダメな父親。でも憎めない。ショーン・ペンはこういう役がよく似合う。娘と父親の話。ストーリーはここからブレない。母親や弟の話は置いといてひたすら父との関係を描く。娘が母親の元を出て父親のところへ行く。張り切って働き始める父親。彼のスーツケースは空っぽ。密かにジーパンを伸ばす機械を売っている。なんだよそれ! 胡散臭いにもほどがある。ハッパは絶対ダメだぞと言いながら隠し場所を変えられて激怒する父親が可愛い。

  • 文筆家/俳優

    睡蓮みどり

    時代ごとにレンズを使い分け、フィルムを駆使したという本作の撮影。変わりゆく映像の質感からは、この映画がもつ本質的な愛情の深さが伝わってくる。ショーン・ペンが監督し、娘のディラン・ペンと息子のホッパー・ペンと共演した正真正銘の家族映画なのだが、それがとことんいい方向にいっている。父親のどうしようもなさに焦点を当てるのではなく、娘の視点で世界を見つめることで複雑な感情がより生きてくると同時に、忘れがたい思い出の数々が宝物のように煌めきはじめるのだ。

  • 映画批評家、都立大助教

    須藤健太郎

    監督が主演を兼ねるといかにも自画像に見える。娘の役を実の娘が演じ、父への愛憎半ばする感情に焦点が当てられるとなれば、なおさらだろう。だが、本作をショーン・ペン個人の自意識の問題に帰しては本質を見誤る。星条旗制定記念日に生まれた、偽札事件の犯人。主題はあくまで「アメリカーナ」であり、その偽物である。父が回していた8ミリの映像が何度も引用されるが、父のいない場面でも8ミリが流れる。不思議に思うや、カメラを回す友人が映る。このあたりの律儀な真面目さ。

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