彼女のいない部屋の映画専門家レビュー一覧

彼女のいない部屋

「さすらいの女神たち」では第63回カンヌ国際映画祭監督賞・国際映画批評家連盟賞に輝くなど監督としても高い評価を得る俳優のマチュー・アマルリックが、現実と想像が入り混じったミステリアスな映像と音響のモンタージュで人間の感情を表現した人間ドラマ。主人公のクラリスを「オールド」のヴィッキー・クリープスが、夫を「Girl/ガール」のアリエ・ワルトアルテが演じている。第74回カンヌ国際映画祭[カンヌ・プレミア]公式作品。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    主人公の彼女の動きがヘンテコだ。突然男の人に抱きついて泣いたり、魚屋の氷の上に顔を埋めたり。よく分からん。パラレルワールドなのか? 子どもを置いて出て行ったはずなのに、別のシーンでは一緒にいたりする。見ていくうちに、だんだんと胸を締めつけるような悲しみが襲いかかってくる。全てのピースが後からハマっていく感じ。見終わって、すぐさまもう一度見たくなった。彼女のいない世界のあったかもしれない幸せ。その描写がリアルであればあるだけ、悲しみは大きい。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    ひとつの受け入れがたい現実と、そのために生まれる新たな現実。どこからが現実なのかがわからなくなる物語構成を、まるで謎解きをしていくように進んでいく。前作「バルバラ」(17)に続き、幻想とリアルの入り混じった手法をふんだんに満喫することのできる本作は、非常にマチュー・アマルリックらしい作品。新作をいつも楽しみにしている監督の一人でもある。一度その世界に足を踏み入れたら、何度でも繰り返し見たくなるにちがいない。日本語版のタイトルも秀逸。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    マチュー・アマルリックの映画はいつも「創作」をめぐる。だが、「ウィンブルドン・スタジアム」(01)でロベルト・バズレンに関心を示していたように、そこでは書かないことこそが書くことであり、創作ならぬ創作が問題である。前作「バルバラ」(17)が伝記映画制作を題材に「解体」の様相を示したとすれば、今作が焦点を当てるのはむしろ「再構成」である。私たちにはときに創作が必要だ。しかし、それがなぜ必要なのかをこんなに悲痛に示しえた映画があったろうか。

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