ヘタな二人の恋の話の映画専門家レビュー一覧

ヘタな二人の恋の話

「れいこいるか」などの監督いまおかしんじが脚本を担当した、おかしくも切ないささやかな恋の物語。人とのコミュニケーションがうまくできない祐太と綾子は、ある日偶然知り合い恋に落ちる。生きるのがヘタなそんなふたりの出会いから別れまでの7年間が綴られる。出演は、本作で映画デビューを飾る街山みほ、NETFLIX『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』の鈴木志遠。監督は「橘アヤコは見られたい」の佐藤周。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    「花束みたいな恋をした」は有村架純と菅田将暉が演じた時点で、普通が神聖化されている気がした。本作は花恋へのカウンターで、普通じゃない人の花束みたいじゃない恋を描く。その姿勢や良し。だから後半、病気に走らず、性格や心の不安定だけで押して欲しかった。いまおかさんの台詞は上手いが、演出がそれを処理するのに汲々としているようだった。最後のセックスで相手の名前を忘れるのなら、台詞で後説するのではなく芝居だけで見せないと。そのぎごちなさも悪くないのだけれど。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    「うざい」「きもい」とデート相手に罵倒された鬱の女とコミュ障の男。そんな二人が一緒に暮らしてもやっぱりうまくいかないが、そのとことんうまくいかない姿を丁寧に描く。困難が降りかかるたびに、女と男の相寄る力は純度を増すし、二人の欠落感は実は誰もが抱えているものだとわかる。でもやっぱりうまくいかない。極端な設定の女が身近な存在になるにつれ、街山みほがどんどん魅力的になる。走るショットもすばらしいが、仰角で夕空と二人をとらえたロングショットは白眉。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    実生活ではできれば関わりたくない、互いを高め合うどころか足を引っ張り合っているようでもあり、こじれた拍子に新聞ネタにでもなってしまいそうな危うい男女。先日の某泥沼裁判ではないが、出逢わなければよかった方の運命のふたりの物語かと思いきや、白くまアイスで涼をとり、クレイジーな夏を何度もともに過ごすうちに、真の運命のカップルへと転じていく。自身のことだけで精一杯だった自己中同士が、相手を思いやることで愛を見つける、何気ない“攻め”も光る巧篇。

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