宇宙人の画家の映画専門家レビュー一覧

宇宙人の画家

「クールなお兄さんはなぜ公園で泥山を作らないのか」でカナザワ映画祭2020期待の新人監督賞を獲得した保谷聖耀監督が、期待の新人監督スカラシップにより制作したSF。いじめを受けるホウスケが描いた暗黒活劇漫画『虚無ダルマ』の世界と現実が混ざり……。石川県金沢市および加賀市で全編撮影された。出演は、「阿吽」の渡邊邦彦、ラッパーの呂布 000 カルマほか。石川県金沢市で開催のタテマチ屋上映画祭2021にてプレミアム上映。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    説明にテロップを使う怠惰さ、さらにその文章の拙さに「?」となっていたら、中盤から思わぬ展開に。そんな野心的な構成や印象に残るショットなど長所も少なくないのだが、映画として骨格がこれだけガタガタではすべてが台無し。いくら台詞が棒読みでも、あるいは台詞を?んだシーンをそのまま使うのでも、作品内でその基準が一定に保たれていればまだ観られるのだが。ここまで無理をして映画というフォーマットにこだわらなくてはならないほど、今も映画は特別なものなのだろうか?

  • 映画評論家

    北川れい子

    ろくでもない世界に絶望し、みんな死んでしまえ、と願うのは、思春期の子供たちにありがちな現象だが、99年生まれという保谷監督は、そんな極端な発想をべースにカラーとモノクロの二つの世界を作りあげ、しかもカラーの世界はモノクロ世界が生み出した自由のない全体主義。発想は子供っぽいが、なかなか侮れない怪力作である。モノクロ世界の舞台がいじめありの中学校なのもリアル。漫画にアニメに写真や特撮、銃にピアノに達磨光現器なる悪人退治道具まで登場、そして巨大観音像!!

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    かなり計算されて、意志的にわけのわからないものになっていると思うが、このわけわからなさだけでもう断然評価したい。呂布カルマが一刀彫の観音像をマイクのように握って説法ラップをかますところで、確実に異様な何かが起こっている、と嬉しくなった。構造上、後半部分が失速してしまっていると思う。前半の妄想世界の全面展開こそが最高の夢であった。そこに浸っていたかった。ただそう感じた者は既に少年とシンクロしている。そのため、観た後、眼から光線が出そうになる。

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