新章パリ・オペラ座 特別なシーズンの始まりの映画専門家レビュー一覧

新章パリ・オペラ座 特別なシーズンの始まり

コロナのパンデミックに見舞われたバレエの殿堂・パリ・オペラ座を舞台に、ダンサーたちの期待と不安、葛藤の日々を見つめた情熱のドキュメンタリー。閉鎖から3カ月後、仲間と再会し、伝統の演目の公演にすべてを懸けるダンサーたちの挑戦と、新エトワール誕生までの軌跡を追う。監督のプリシラ・ピザートが、パリ・オペラ座に特別に許可を受けて、ダンサーと振付師が究極の舞台を作り上げていく日々を撮影した。2022年フランス国際ドキュメンタリー映画祭(FIPADOC)にて観客賞を受賞したほか、2022年・第40回モントリオール国際芸術映画祭(FIFA)にも正式出品され、「ダンスに捧げる感動的な抒情詩」「舞台の魔法を魅せてくれる1本」と評価された。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    久々にみんなが再会した時の嬉しそうな顔ったらない。コロナになって、人と会わない時間がどれだけキツかったか、分かる。稽古が始まって体を動かし始めると、だんだんのめり込んでいって、何も見えなくなる感じもいい。ダンスしかないって人たちの愚直なまでのストイックさが胸を打つ。何度も何度も同じ動きを繰り返して、足がつらいとこぼし合う彼女らの楽しそうなこと。散々稽古して、無観客になってしまったときのみんなの落胆した顔。いろんな顔を丁寧に捉えている。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    コロナ時代の舞台芸術表現の物語でもあり、とても興味深い。カメラが近くで捉えるバレエダンサーたちの身体的な美しさや筋肉のしなやかさ、その動きにとにかく見入ってしまう。これまでのように表現ができないことがどれだけ肉体に、精神に影響するか。オペラ座閉鎖から、さらに公演中止、ライブ配信をするまでの軌跡を辿りながらも、バレエ界に限った話ではなく、ものづくりにおける普遍的な要素も多く面白い。歴史的な一幕が73分に凝縮されていて非常に見応えがあった。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    コロナ禍で多くのものの存続が危ぶまれるようになったが、パリ・オペラ座も例外ではない。オペラ座を続けるには、まずは練習にリハーサル。公演こそがその存在意義だからである。最悪、無観客でも配信でつなぎ、ついに1年半ぶりの有観客公演へ。さて、オペラ座では再開後に2人のエトワールが誕生した。映画のラストでこう2度も任命式が続けられると、この任命の儀式こそ観客が待ち望んだもので、バレエ以上のスペクタクルに見える。オペラ座の存続に必須なのはこの階級制なのだ。

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