女神の継承の映画専門家レビュー一覧

女神の継承

韓国映画界が誇る「哭声/コクソン」のナ・ホンジンが原案・プロデュースを手掛け、「愛しのゴースト」でタイ映画のNO.1人気監督となったバンジョン・ピサンタナクーンが監督した「恐怖」と「エンターテイメント」が融合する新感覚ホラー映画。村で脈々と続いてきた祈祷師一族。その美しき後継者を不可解な現象が襲う。タイ東北部イサーン地方を舞台にした本作は、深い森や神秘的な洞窟、エキゾチックな儀式を余すところなくカメラに収め、観る者を常識が通用しない戦慄の秘境へと招き入れる。2021 年プチョン国際ファンタスティック映画祭で最優秀長編映画賞受賞。
  • 映画評論家

    上島春彦

    アジアンホラーには独特な触感が。要するに怪談なのだ。特に韓国、日本、それにタイ。祖先の因縁や階級差の生む悲劇が背景で、それらを民俗的というよりも映画史的な連携で具体化する。本作は韓国映画「哭声/コクソン」の祈?師の出自を探る物語。監督は日本映画風の心和むホラー「愛しのゴースト」で知られる。また監督デビュー作「心霊写真」は落合正幸監督でリメイクされた。森の奥での儀式の光景がさすがなのだが、監視カメラの映像が日本映画みたいでかえって興を殺がれた。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    感覚的なズームや絶え間ない手ぶれなどの演出が続くモキュメンタリーの手法が採られているが、それが2時間を超える上映時間をより冗長にしているかのようでやや長く感じる。終盤はカオスというよりも、単に映画が破綻していく様を眺めているよう。監督であるピサンタナクーンの過去作「愛しのゴースト」やプロデューサーであるナ・ホンジンの監督作「哭声/コクソン」などは土着性がそれぞれ生かされた良作だったかもしれないが、本作のタッグに関しては奏功していないのでは。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    目に見えないモノたちやそれを司る儀式へのナ・ホンジンのアプローチは特異で、「哭声/コクソン」のお祓いシーンなどは今でも忘れ難い。彼が製作した本作もそうしたセットアップは完璧であり、「これが本物だ」と信じられるだけの道具立ては揃っている。それだけに、制作者のカメラ・アイへの意識の行き届かなさが終始気になった。たとえモキュメンタリーであっても、ホラー映画をホラー映画たらしめているのは、ショットごとの「視線」に対する研ぎ澄まされた感覚であるはずだ。

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