映画はアリスから始まったの映画専門家レビュー一覧

映画はアリスから始まった

現在の標準的な映画製作技法を次々と生み出し、1000作品以上を手がけた監督・製作・脚本家、アリス・ギイの生涯に迫るドキュメンタリー。1895年、リュミエール兄弟による世界初の映画『列車の到着』を見たアリスは、映画の“物語る力”に可能性を見出していた。ナレーションを「羊たちの沈黙」「モーリタニアン 黒塗りの記録」のジョディ・フォスターが担当。パメラ・B・グリーンによる初長編監督作。
  • 映画評論家

    上島春彦

    アリス・ギイ=ブラシェという名前を『私は銀幕のアリス』という彼女の自伝が出た際に覚えた。最近シネマヴェーラでも少し見られたので、今夏の公開は時宜に適っている。その生涯は決して恵まれたものではないにせよ、映画史ドキュメンタリーの存在は僥倖といえる。ただし私は製作の背景よりもギイの映画自体をもっと見たかった。問題の世界初の劇映画「キャベツ畑の妖精」にしても、彼女の記憶と微妙に異なるというし。焦点を当てる事柄は沢山あったはずなのに。傑作だが惜しい。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    本作の底流にあるのはアリス・ギイその人と作品の魅力だけではなく、ひいてはこれまで「正史」として広く扱われてきた「映画史」への疑義そのものであろう。今日のデジタル技術を駆使してギイの功績を再発見し彼女の「肖像画」を再構築するラストシーンの演出が、この時代における「波」を形象する。高く評価されながら映画史において見過ごされてきた女性の映画作家バーバラ・ローデンの「WANDA/ワンダ」と本作が同月にここ日本で劇場公開されるのも、決して偶然ではない。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    映画史上初の女性映画監督アリス・ギイ=ブラシェはリュミエール兄弟やメリエスと並ぶ映画史における重要人物であり、女性をはじめ男性中心主義が措定したさまざまな社会的マイノリティーたちと寄り添い続けた作家でもあった。にもかかわらず、その功績に対して正当な評価を受けているとは言い難い。そうした彼女の存在に照明を当て、これだけの豪華出演者をして彼女について語らせただけでも本作の存在意義は計り知れない。そしてそれはこうした時代において一層光り輝く。

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