ビリーバーズ(2022)の映画専門家レビュー一覧

ビリーバーズ(2022)

カリスマ的人気を誇る漫画家・山本直樹が「カルト」的な宗教団体をモチーフに人間の欲望をあぶり出した20世紀末の問題作を、「アルプススタンドのはしの方」「愛なのに」で大ブレイク中の遅れてきた天才、城定秀夫監督の熱望により実写映画化。俗世の汚れを洗い落として「浄化」されることを願い、外界との接触を絶って孤島で精神修行に励む3人組には、主人公の「オペレーター」役に「PLAN75 」など話題作出演が相次ぐ磯村勇斗、議長役に「罪の声」他でキネマ旬報ベスト・テン助演男優賞に輝いた宇野祥平、ヒロインとなる「副議長」役に22歳の新鋭、北村優衣が配された。この個性的な俳優たちが、繊細な心理描写や過酷な自然環境下のサバイバル生活シーン、物語に必要不可欠な官能的なシーンに至るまで渾身の演技で観る者を魅了する。原作漫画発表から22年の時を超えて、疫病、災害、戦争など混迷を極める時代に、生の根源を見つめる新たな問題作が誕生した。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    山本直樹の原作が発表されたのは1999年。オウム真理教事件の余波の最中で、その約20年前に起こった人民寺院集団自殺をレファレンスの射程に収めた作品だった。そこからさらに20年以上が経過して、新興カルトの前提となる社会がすっかり変化した痕跡、つまりこのタイミングで実写映画化した理由が、本作には見当たらなかった。夢や回想のシーン以外、ほぼ全篇を極端に限定されたシチュエーションと人数で展開していくならば、もっと映画的趣向を凝らす必要もあったのでは?

  • 映画評論家

    北川れい子

    「夜を走る」「鬼が笑う」と、ここ立て続けにカルト宗教が登場しているが、本作は孤島で修行中の宗教3人組のかなりシリアスなピンク系ブラックコメディで、殺しまである。悟りを得るためにストイックな合宿生活を送っている男2人に女1人。女は若い。当然、男2人はいま目の前にある欲望の対象に翻弄されていくのだが、精神と本能の対決ふうな小難しい展開があるわけでもなく、終始白いTシャツに半パン姿で動き回る彼らはどんどんワイルドに。北村優衣の大胆な演技は悟りかも。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    原作漫画から二十余年経ってここまで的確に映像化されると、もはやオウム真理教への揶揄や批判を超えた、普遍的な社会論人間論のように見える。メインはほぼ三人の芝居だがこの彼らが素晴らしい。宇野祥平氏は「夜を走る」で新興宗教の教祖役だったが本作では同様の組織のランク12位の「議長」。どこに置かれても説得力のある演技マンが今回も見事。磯村勇斗氏もここまで出来ると知らなかった。北村優衣氏の全身、磯村北村の絡みに、組織化を否定する真のユートピアを見た。

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