シネマスコーレを解剖する。 コロナなんかぶっ飛ばせの映画専門家レビュー一覧

シネマスコーレを解剖する。 コロナなんかぶっ飛ばせ

名古屋にあるミニシアター・シネマスコーレの支配人を追ったドキュメンタリー。2021年3月に中部地区で放送し、ギャラクシー賞奨励賞を受賞した番組『メ~テレドキュメント 復館~シネマとコロナ~』に未公開シーンや継続取材した映像を加えた再編集版。ナレーションは、「菊とギロチン」の韓英恵。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    「東京は反文化都市」「配信を敵視してきた」といった支配人や副支配人の言葉の端々から本心が窺える。自分はそれをはっきりズレていると考える立場だが、だからこそミニシアターが置かれている現状の理解には役立ったし、昨今表面化している日本映画の制作過程における諸問題と地続きであることにも改めて気付かされた(特殊な成り立ちであるこの劇場を過度に一般化すべきではないが)。タイトルに「コロナなんかぶっ飛ばせ」とあるが、本当の問題は「コロナ」ではないはず。

  • 映画評論家

    北川れい子

    そういえば以前、シネマスコーレの副支配人、坪井篤史のドキュメンタリー「劇場版?シネマ狂想曲」を観たことがある。ある種の映画を神輿のように担ぎ上げ、ゲストを招いて学園祭的に大はしゃぎ。本作にも坪井副支配人は登場するが、コロナ禍でイベントも開けず意気消沈、退職まで口にする。それに比べると、シネマスコーレ生え抜きの木全純治支配人は、精一杯の言葉と行動で映画文化を守ろうとする。1円に至るまでの収支報告もさることながら、自ら劇場の補修をする支配人に脱帽だ。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    映画館の運営から離れてかなり経つがその記憶は残っていて、ひとが集うことがひたすらに良きことであり、それがあらゆる意味あらゆる方向にはたらく力であったという感覚があるので、新型コロナ感染症の流行、そのために、集うな、となったことはほんとに憎かった。それは現場の人間ならもっと切実、深刻だろう。現在劇場で流れる映画館の換気の解説映像はこういう意志で、やってできたの? そこなども含め、本作が記録した木全純治氏、坪井篤史氏の奮闘ぶり、情熱には頭が下がる。

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