セイント・フランシスの映画専門家レビュー一覧

セイント・フランシス

ある独身女性の苦悩と揺れ動く心情を、ユーモアを交えて映し出すヒューマンドラマ。レストランの給仕として働き、うだつのあがらない日々を過ごす34歳のブリジット。だが6歳の少女フランシスや、彼女の両親であるレズビアンカップルと出会い、光が少し見えてくる。主役のブリジットを演じるのは、脚本も兼任するケリー・オサリヴァン。監督は、本作が初長編となるアレックス・トンプソン。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    これをどう笑えばいいのか、一瞬戸惑った後クスリとさせられる。差別ネタとは別の形でタブー視されてきた生理や中絶をめぐるギャグをあえて当たり前のものとして提示し続けようとする挑戦的な演出に舌を巻く。ケリー・オサリヴァンが、説教臭さや悲壮感とは無縁の形で中絶を経た平凡な三十代ナニーの物語を軽やかな笑いとともに描き出せたのは、細部のディテールの圧倒的リアルさと、自虐に走ることも開き直ることもなく自己を客観視できる、知性に裏打ちされたユーモアゆえだろう。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    今まで映画ではあまり描かれず、描かれたとしても、笑いを誘うギャグや場を凍り付かせてしまうような事故のようなものとして、つまりは映画のストーリーを進めるためのネタとして扱われることの多かった、生理と出血という事柄を日常にある当然の悩みとして丁寧に描いていることが素晴らしい。そして生理と出血という悩みや困難は、あるとき別の人物の尿漏れという悩みと、下着の交換という行為で繋がり共有される。その瞬間に生まれる連帯のこれ以上のない美しさ。

  • 文筆業

    八幡橙

    主人公の名前が同じ「ブリジット・ジョーンズの日記」をはじめ30代独身女性の抱えるあれこれを綴る作品は数多あれど、ここまで本音に忠実で、芯を喰った映画は初めて観た。主演&脚本のケリー・オサリヴァンの実体験に基づく、生理や中絶、避妊や時限付きの出産への圧力など、女が背負う理不尽が、延々止まらぬブリジットの出血とともに象徴的に描出される。世間の期待する像と、自身の心の乖離。その切実さに加え、異なる価値観を共存させんとする花火の日のエピソードも忘れ難し。

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