エルヴィスの映画専門家レビュー一覧

エルヴィス

バズ・ラーマンが、『監獄ロック』ほか名曲満載でエルヴィス・プレスリーの伝説の裏側を映画化。人気絶頂で謎の死を遂げたスーパースター、エルヴィス・プレスリー。世界一売れたスターの影には、悪名高い強欲マネージャー、トム・パーカーの存在があった。出演は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のオースティン・バトラー、「幸せへのまわり道」のトム・ハンクス。
  • 映画評論家

    上島春彦

    プレスリーとパーカー大佐といったら「一卵性他人」というほどの信頼関係。と思ったら違った。私の心のエルヴィスは本作クライマックスに時期的に相当する「エルビス・オン・ステージ」に続く映画「オン・ツアー」からのヒット曲〈ほかほかバーニング・ラブ〉に尽きるのだが、そこにも大佐の奸計が。またB・B・キング、シスター・ロゼッタ・サープをはじめとする黒人音楽との関わりや公民権運動の推移が活き活きと描かれるのも、上首尾。でも最高なのはテレビでのライヴの一件かな。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    「倍速視聴」の余地がないほどウィップパンを多用しながら随所で旋回する俊敏なカメラが、「迷子」として画面に存するエルヴィス・プレスリーの短く早すぎた人生の迷路を、息つく間もなくみせていく。ややもすればドラッグに溺れ正気を失っていく紋切り型なスターの伝記映画に陥りかねないところを、トム・ハンクス演じるマネージャーの重層的な人物造形と芝居がこの作品に深みをもたらしている。バズ・ラーマンのゴシックな映像美学が主題と合致してスペクタクルが結実した逸品。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    若き日のエルヴィスがあのほったて小屋で「何か」を見てしまって、思わず逃げ出してたどり着いた教会で「何か」に取り憑かれるまでの一連のシーケンスには何らかの映画的奇跡が宿っていた。カントリーとブルースが契りを交わした昼下がり、なんと仲人はヒップホップで、古典=スタンダードを下敷きに、あらゆる境界を激しく攪乱しつづけるバズ・ラーマンの演出は、根底でひとつに統制されながらも何でもありな現代との相性が抜群だ。バズ・ラーマンの時代がすぐそこまで来ている。

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