君を想い、バスに乗るの映画専門家レビュー一覧

君を想い、バスに乗る

「ターナー、光に愛を求めて」のティモシー・スポール主演によるヒューマンドラマ。最愛の妻を亡くしたばかりの90歳のトム。妻と交わしたある約束を胸に、ふたりの人生が始まった場所“ランズエンド”を目指し、トムはローカルバスでイギリス縦断の旅に出るが……。共演は『ダウントン・アビー』シリーズのフィリス・ローガン。監督は「ウイスキーと2人の花嫁」のギリーズ・マッキノン。
  • 映画評論家

    上島春彦

    多少ネタバレ厳禁な部分もあるが、基本、分かりやすい設定と言える。奥さんを亡くした90歳の老人がバスを乗り継いでランズエンドという土地を目指す。何故そこなのか、という件はひとまず置いて、行く先々で出会う人々との関わり合いが細かいエピソードを形成する。映画が始まった時点で当然、奥さんは死んでいるのだが、回想や幻覚でアクセント的に出現。これが効果的。夫婦映画として上出来の部類ではある。いかにも現代映画らしく随所にSNSの話題が飛び出すのも可笑しい。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    亡き妻との記憶を巡りながら老いた男が人生最期の旅に出るロードムービーときて、序盤こそ既視感に苛まれる時間が続くのかと思いきや誠実な作りの佳作。ティモシー・スポールの顔を映し出しただけでも十分にコメディの様相を呈してしまえるにもかかわらず、ショットの時間やカメラの運動を駆使して怠らない演出にも好感を覚える。主題よりも交差する人々とのほんの一瞬のやりとりにこそ煌めきが満ちている。短尺の映画ながら、やや間伸びしている感があるのもこの旅にあってご愛嬌。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    故人との何らかの約束を果たすために、幸せだった日々の思い出を胸に老人が旅に出る、定番のロードムービーもの。撮影も編集も技術レベルは総じて高い。しかし、ロードムービーの肝は何を置いても時間の持続や空間の見せ方であって、それはこのような順当な語りや経済優先の編集とは対極にあるものである。やや説教くさく挿入されていく、「多様化しつつある現在のイングランド」をその眼で見た老主人公がどう変化していくのかを見せるのが映画の映画たる所以ではなかろうか。

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