さかなのこの映画専門家レビュー一覧

さかなのこ

東京海洋大学名誉博士/客員教授の肩書を持ち、タレントとしても人気の“さかなクン”の自伝『さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~』を沖田修一が映画化。魚が大好きな“ミー坊”は、思いがけない出会いを繰り返す中、自分だけの道を進んでいく。出演は「Ribbon」ののん、「映画 太陽の子」の柳楽優弥、「MOTHER マザー」の夏帆、「PLAN75」の磯村勇斗。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    いつもの沖田修一に比して、明らかにユルい作り。そのスタイル自体が、普通ってなんだ?というテーマと通底する。映画ってなんだ?我々が常識(映画的)と考えているものは常識(映画)ではないというメタ構造。男とか女とか映画とか関係ない。しかし、のんのキャスティングを含めて少しテーマに囚われ過ぎたのではないか。さかなクン本人を出したことも正解だったかどうか。いや、それも映画とは?という問いに対する思索なのだろうが。嫌いじゃない。だけど最後まで心弾まなかった。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    これは一種の教養小説なんだろうなと思った。登場人物が経験を重ねながら成長して、何者かになる物語。主人公のミー坊だけでなく、紋切り型の千葉の不良少年たちも、すし職人やら、テレビディレクターやら、それぞれに大人になっていく。さかなのことばかり考えていて、子どもの頃からまったく変わらないように見えるミー坊も、数々の挫折や失意を経て、おさかな博士になる。そう考えると、ここではないどこかをめざす、というのは沖田修一の一貫した主題なのかもしれない。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    さかなクン自ら負の分身のような人物を演じて鮮烈にフェイドアウトすることで、きわめて稀有なサクセスストーリーに根差すパラレルワールドに、妙な生々しさも加わる。そのせいか、ずっと好きなことだけ突きつめる強靭さよりも、“大人”や“普通”の尺度に縛られブレまくるひとたちが、初志貫徹のマイペースに翻弄されつつ人生を進む姿の方が、魅力的に映ったりもする。「横道世之介」コンビらしいB面群像劇の趣だが、さかなクン≒ミー坊にしか見えない景色も覗いてみたかった。

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