ぼくらのよあけの映画専門家レビュー一覧
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脚本家、映画監督
井上淳一
27年前、親たちが帰せなかった宇宙船を子供たちが帰す。因果話なら子供が親と同じAIに出会うのを偶然にしてはダメだし、約束を果たせなかった親の罪悪感や子供と再びそれに向き合う心情も描くべき。物語の説明は不必要に丁寧だが、映画で描かれた以外の時間が見えない。各キャラも似通っているし、薄い対立と葛藤が主旋律の物語に回収されず、すべてがユルい。主舞台の団地がなんのメタファーにもなっていないのも痛い。そういうドラマ作りが今っぽいと言われたら、それまでだけど。
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日本経済新聞編集委員
古賀重樹
2049年という近未来の物語の舞台のモデルとなったのは、2013年に取り壊された東京・杉並の阿佐ヶ谷住宅。高度成長期に建てられた団地の懐かしい風景が、進化した端末や人工知能搭載のロボットが登場する近未来世界の中で、一段と郷愁をそそるのが面白い。難破した宇宙船の帰還を助けるという親世代が果たせなかった夢を子どもたちが叶えようとする、そこに「よあけ」を見る、というのがいかにも今の日本の停滞感を反映しているようで、センチメンタルではあるけれど。
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映画評論家
服部香穂里
意思や思考力をも育んでいく優等生キャラの家庭用ロボットの変貌や、約束事に忠実な“謎の存在”の律儀さが、進化を続ける人工知能の柔軟な可能性を示唆する。その反面、いじめっ子が瞬時にいじめられっ子に転じてしまう人間の進歩のなさが際立ち、双方の確執にも安易な解決を認めないところに、社会を冷静に見通す作り手の洞察が光る。人工知能と共生する未来の明暗も、子どもから大人になるにつれ大切な何かまで失いがちな人類次第と痛感させられる、いささか教訓めいた冒険譚。
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