生きててよかったの映画専門家レビュー一覧

生きててよかった

プロボクサーだった経歴を持ち、ドニー・イェンが認める<逆輸入俳優>木幡竜が主演を務めた本格アクション映画。年齢と身体の限界を超えてもなお闘い続けることにしか生きる価値を見出せない元ボクサーの狂気と本気をスリリングに描く。木幡竜が演じた創太には、木幡自身がプロボクサーを引退しサラリーマンを経て俳優になった頃の不遇の時代が反映されているという。木幡は中国映画「南京!南京!」(09)の出演を機に、単身中国に渡って中国語を学び、アンドリュー・ラウ監督の「レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳」(10)でドニ―・イェン、 スー・チー、アンソニー・ウォンらと共演。昨年は綾野剛主演ドラマ『アバランチ』の“最狂の敵”役で注目された。監督・脚本を務めたのは「くそガキの告白」(11)がゆうばり国際ファンタスティック 映画祭で審査員特別賞ほか 4 冠を獲得した鈴木太一。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    「日本の映画人、ボクシング好きすぎ」問題はひとまず置いておくとしても、パッとしない町でパッとしない人生を送るパッとしない人物の夢の挫折や再生の物語を日本のインディーズ映画はどれだけ再生産し続けるのだろうか。「そこまで古くさい女じゃない」とわざわざ台詞で言わせた主人公の妻が、男性の幻想をただ反映させたような、精神的にも肉体的にも男性に依存しきった女性であることにも脱力。一方、サブキャラクターの造形は魅力的で、メインストーリーの退屈さを救っている。

  • 映画評論家

    北川れい子

    体脂肪率3%まで搾って主人公を演じている木幡竜の肉体にはある種の狂気と殺気がある。さしずめ“死にいたる病”を思わす主人公のボクシング。お前はボクシングか好きなんではない、ボクシングをしている自分が好きなんだ、とは元ジムの会長の言葉だが、闘うことでしかちゃんと生きられない男を、木幡竜はガムシャラに演じ、話を引っ張っていく。ただどうしても気になったのは彼の老け顔で、幼なじみの運命の人、幸子と並ぶと父娘もかくや。もう1人の幼なじみの今野浩喜がいい味。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    たしかに「レジェンド・オブ・フィスト」のラスボス日本軍人が良かったです木幡竜氏。本作で見られるような脂肪率の低い身体はもうそれだけで単に偉いし、映画として見栄えのする被写体だと思う。それと「ベイビーわるきゅーれ」の三元雅芸氏が。アクション監督園村健介が練った高次元格闘がそれを見せたいだけとか、ゲーム的に、ではなく必然として、有機的に映画全体とともにあることが見応えとなる。監督が異貌、異相揃いの各キャラクターに注いでいる想いも素晴らしい。

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