三姉妹(2020)の映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
上島春彦
強烈な家族映画で悲劇を喜劇に変換する演出手腕に感服する。宣伝ポスターに現れない末っ子(弟)が最重要人物とじわじわ分かる見事な構成。強固な家父長制とアルコール依存が問題の根底にあるのは、それ以前に分かっている。三姉妹が過去、弟とどう関わったかがポイントだ。ただし気になるのは次女が、かつての父親のような理不尽さを自身の家族(夫や子供)に対して発揮しているように見えかねないこと。本当はここが怖いのだが、そこは曖昧にするしかなかった。課題は未解決だ。
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映画執筆家
児玉美月
そういう構造の映画だとはわかってはいても、いかに三人の女たちが不幸な人生を送っているかを入れ替わり立ち替わり語る終盤の種明かしまでが忍耐を求められる時間となってしまう。とはいえ、待ってましたと言わんばかりの一堂に会する山場には、さすがに落涙を禁じ得ない。個の不幸がそこで帰着せず、韓国社会における「父」の権威を維持せんとする強固な家父長主義へと見事に合流するのだ。だからこそ「父」は個人としての具体的な台詞=語りを持ち得ないまま内省を課されている。
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映画監督
宮崎大祐
難病におかされた長女、宗教にすがる次女、表現活動が停滞する三女。現代人ならではの実存のあがきを抱えた三姉妹の孤独と再生がフレーミングとアクションを通じて丁寧に演出されている。フレーム外への不安を喚起するシングル・ショットの連続と人物の孤立感を強調するようなフル・ショットの連続によって構成される前半、切り返しとツーショットが増える中盤、そして複数人数が同時にうごめきはじめる後半。フレームの中に収まる人間が増えれば増えるほど映画が色づいていく。
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